おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

おすすめの将棋本

昨年の秋頃から息子が急に将棋好きになり「将棋、習ってみるか?」と聞くと「習いたい!」というので調べてみると、幸いなことに最寄り駅に棋士高野秀行さんの将棋教室があったので、体験を経て入塾したのです。月に2回の「子ども将棋教室」ですが、通い出したらあっという間に強くなり、僕もほどなく勝てなくなりました。

こちらが勝ってばかりのときは「早く強くなれ」と思うものですが、こちらが勝てなくなると「せめて数回に一回は勝たないと父親としてマズいだろう」と思うようになり、独自の研究を始めることにしたのです。

ま、研究といってもいろんな本を読んだだけなのですが、それでもいくばくかは強くなって、今では息子に3回に1回は勝てるかなー。ま、それで僕が読んだ本のなかから、読みやすく、広くお勧めしたい本をメモがてらご紹介しておきます。将棋の本は、すごくたくさんあるのですが、駒の動かし方を書いた初心者本と「四間飛車居飛車」といった、なんかちょっと上級っぽいものばかりで、なかなかちょっと強くなってしまった息子に勝つって本が少ないのですが、そんななか、以下のような本はとてもためになりました。

羽生善治の将棋入門 ジュニア版

羽生善治の将棋入門 ジュニア版

 

 まずお勧めはこの本。ちょっと高価ですが、基礎から強くなるための要素がわかりやすく、かつ見やすく解説されていて素晴らしい。羽生さんもすごいのだろうけど、レイアウトも含めた編集力が高いです。将棋本にはこの本のような「ちょっと強くなった人がもう少し強くなるために必要なこと」が、あまりないように感じるんですがどうでしょうか。

寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス)

寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス)

 

 僕が子どもの頃はとにかく「王手!」が大事という意識でしたが、とんでもない勘違いでしたね^^:「玉は包み込むように寄せろ」という鉄則は、この寄せの手筋を学んでいけば、自ずと実践できるようになります。下手な人は読むだけで確実に強くなるんじゃないでしょうか。

 Kindleに入れて繰り返し目を通したのがこの本。《手筋とは駒の特性を生かしたさまざまなテクニックの総称》ですが、歩を効果的に打って攻撃の起点を作ったりと、知ってると知らないじゃ大違いなテクニックが満載。普通に打ってるだけではなかなか気づかないこれらの手筋は、知るだけで確実に強くなると思います。

強くなったのは、上記3冊の影響が大。あとは面白い本。

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

 

 定番中の定番ですが、やはり面白いです。映画も上映中で息子と見てきましたが本のほうが断然よいですね。将棋の面白さは映画ではわかりかねます。本がいいです。

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

 

 これはずいぶん前に読んだ超絶面白本。鬼六先生はすごいですよ。

将棋エッセイコレクション (ちくま文庫)

将棋エッセイコレクション (ちくま文庫)

 

将棋に関するエッセイを集めたアンソロジー。冒頭。中平邦彦さんの「聖者」というエッセイが、しびれる。実にしびれる。こんな一節、実にいい。

《アメリカの社会学者O・Eクラップは、人の社会的カテゴリーを次のように分類するそうだ。「英雄」「悪漢」「馬鹿」「無関心」。そして「英雄」と「馬鹿」を合わせ持つ者が「聖者」の属性を持つという。棋士、そのまま当てはまる。棋士は庶民の英雄だ。単なる名声だけでなく、実力の世界で、禁欲と自己統制によって獲得した地位だけに英雄的だ。そして何より将棋一本に打ち込んでいる。非生産的な、いわば無益な(功利性のない)ものに打ち込む。そこには世俗的な関心はなく、常識も欠落したりする。これはフールの属性だ。この二つが融合して存在する人たちに対し、一般の人は、自分がそうなろうと思わないが、尊敬を払うというのだ》

ひらけ駒!(1) (モーニングコミックス)
 

 将棋の漫画もいろいろあるけど、これがいちばん好き。 息子の成長も楽しいけど、将棋を知らなかった母親の成長が面白いのです。

透明の棋士 (コーヒーと一冊)

透明の棋士 (コーヒーと一冊)

 

 ミシマ社のこの本もよかった。僕は、棋力アップは息子の相手ができる程度で充分ですが、棋士とか将棋をとりまく世界のことはもっと知りたい。実に興味深い。

ちなみに今、1週間でいちばん楽しみにしているテレビ番組は日曜日の朝にやっている「NHK杯」の対局でして、将棋だけでなく棋士を見るのも面白い。新聞の将棋の記事を毎朝読んでいます。そうそう「東京新聞」の将棋担当の方にお願いなのですが、「△4六飛」といった駒の指示が3つも4つも続くともう読むのが大変なのでせいぜい2つくらいまでにしてくださいね。

というわけでまだまだ将棋への興味が尽きない日々を送っているのでした。

「くらべる東西」のテレビ出演情報

最近、テレビにお世話になることが続いたので、まとめてご紹介しておきます。

まず、tvkという神奈川県を中心に放送しているテレビ局のお昼のワイドショー「猫のひたいほどワイド」の11月1日放送で「くらべる東西」の特集をしていただきます。

通称「ねこひた」というのですね、この番組。先日、ロケがあってスタジオ見学させてもらったのですが、併設されたカフェで生放送が見られるという、同社の看板番組。レポーターの和田雅成さんとロケに行った「いなり湯」が、まさに由緒正しき東の銭湯で素晴らしかったです。

続いて朝日放送さんの人気番組「ビーバップハイヒール」でも「くらべる東西」を特集してもらいます。11月10日放送予定。この番組スタッフの方々の熱意が素晴らしく「くらべる東西」の本に載っていない新事実も続々発見されて面白い番組になっていると思いますので、ぜひご覧くださいませ。

朝日放送 | ビーバップ!ハイヒール

そして先週は「めざましテレビ」で「くらべる東西」を「マニアックだけど気になる写真集」として紹介してもらいました。見てなかったのですが、ランキング形式で、こんな順位だった模様。

5位『くらべる東西』

くらべる東西

くらべる東西

 

 4位『街角図鑑』

街角図鑑

街角図鑑

 

 これは僕も読みました。パイロンとか三角コーンとかいろんなバリエーションのを紹介してて、想像以上にすごかった。

3位『シブいビル』

シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド

シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド

 

 これも見ましたねー。好きです、建築ネタ。

2位『世界のトイレ』

何度でも行きたい 世界のトイレ

何度でも行きたい 世界のトイレ

 

 そして1位は『日本のブックカバー』

日本のブックカバー

日本のブックカバー

 

 書泉ブックタワー秋葉原店の方が紹介してくださった模様。今度、御礼を兼ねて見学しに行こうかと思います。

『暮しの手帖』が「装釘」という表記にこだわる理由

『くらべる東西』を『暮しの手帖』で紹介してもらったのですが、そこである気づきがありました。

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デザインを担当してくれている佐藤美幸さんの名前も出ていて嬉しいなーと思っていたとき「装丁」ではなく「装釘」と書いてあることに気づきました。どちらも「そうてい」と読みますが、なかなか「装釘」とは書かない。というか、この表記、初めてみましたよ。

なんでだろ。こだわりなのかなと思い調べると、まさに『暮しの手帖』のこだわりで、それも『とと姉ちゃん』に登場する花山伊佐次のモデルとなった初代編集長の花森安治さんのこだわりだったのです。

装釘には「装丁」「装訂」「装釘」「装幀」と4つの表記があるようですが、花森さんは、それぞれのことばの意味を吟味すると、どうしても「装釘」になると考えたようです。

「幀という字の本来の意味は掛け物だ。掛け物を仕立てることを装幀という。本は掛け物ではない。訂という字はあやまりを正すという意味だ。ページが抜け落ちていたり乱れているのを落丁乱丁というが、それを正しくするだけなら装訂でいい。しかし、本の内容にふさわしい表紙を描き、扉をつけて、きちんと体裁をととのえるは装訂ではない。作った人間が釘でしっかりとめなくてはいけない。書物はことばで作られた建築なんだ。だから装釘でなくては魂がこもらないんだ。装丁など論外だ。ことばや文書にいのちをかける人間がつかう字ではない。本を大切に考えるなら、釘の字ひとつおろそかにしてはいけない」

文末にリンクしたサイトから引用させてもらいましたが、

書物はことばで作られた建築なんだ。だから装釘でなくては魂がこもらないんだ

って、素晴らしいことばだなー! 感服しました。僕も真似てこれから「装釘」と書くことにしよう。というか、出版界は「装釘」で統一してもいいんじゃないでしょうかね。

www.1book.co.jp引用した文は、以下の書籍にあるようです。読んでみよう。我が家は『とと姉ちゃん』録画したのを、家族でゆっくり見てまして、まだ次女がお嫁に行ったところあたりを見ております^^

花森安治の編集室

花森安治の編集室

 

 

さかなクンの一魚一会

さかなクンの一魚一会』を読んで、考えさせられたので、ご紹介。

さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~

さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~

 

さかなクンは、以前「いじめられている君へ」という素晴らしい文章を読んでからいっそう好きなのです。(以下、未読でしたらぜひ)

朝日新聞デジタル:いじめられている君へ - 教育

それで、この本ではその半生が記されているのですが、やはり紆余曲折あって「さかなクン」になっているんですね。

子どもの頃から絵が好きで、魚が大好き。でも運動も勉強も苦手だったさかなクン。高校卒業後、大学に進学する学力がなかったため、水産系の専門学校に進学します。その後、水族館や熱帯魚店、お寿司屋さんなどで働いてみるも、どうも自分に合わない。魚が大好きで、どれも魚に関係する仕事なのに、自分に合わない。そう悩んでいたさかなくんを救ったのは、こんな一言でした。

 《はっきりいって、寿司職人には向いてないけど、絵はすばらしい!そうだ絵を描いてよ。うちの店の壁いっぱいに!好きなように魚を描いて。時給もあげるからさ》

ここからお魚専門イラストレーターとして注目されるようになり、徐々に「さかなクン」になっていったのです。まさに既存の枠にハマらない「さかなクン」だけがなり得る「さかなクン」という職業。ここに至るのに欠かせないのが、彼のお母さんの意思でした。このお母さんがスゴいのです。

魚の絵ばかり描いていて、勉強をしないさかなクン。お母さんは、家庭訪問のたびにもう少し勉強に集中するよう言われたといいます。しかし《「あの子は魚が好きで、絵を描くことが大好きなんです。だからそれでいいんです」》。これから困るのは、お子さんですよと言われても《「成績が優秀な子がいればそうでない子もいて、だからいいんじゃないですか。みんながみんなといっしょだったら先生、ロボットになっちゃいますよ》ならば絵の先生について習ってみてはという提案には《「そうすると、絵の先生とおなじ絵になってしまいますでしょ。あの子には、自分の好きなように描いてもらいたいんです。今だって、誰にも習わずに自分であれだけのものを描いています。それでいいんです》

強い。強いなー。

個性が大事と多くの親が理解しているでしょうが、ここまで言える人がどれだけいるでしょうか。そういえば一流のスポーツ選手の親を取材したこんな本があります。

天才は親が作る (文春文庫)

天才は親が作る (文春文庫)

 

 この本に書かれていた松坂大輔や、イチローのご両親も、このさかなクンのお母さんに似ていたなぁと思い出します。やはり個性的な子どもは、類希な親の覚悟と信頼があってこそ育つのでしょう。この本の文系版、あってもいいんじゃないでしょうか。

丸善のトーク&サイン会、楽しかったです

9月11日、京都の丸善本店のトーク&サイン会、楽しく終えることができました。

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当日、来てくれた高校時代の友人が写真を撮ってくれたのでご紹介。僕(右)と担当編集のFさん(左)は、ともに山出カメラマンが作ってくれた「東西Tシャツ」を着ております^^ いつもウェブ上でのお付き合いだった方々にもお会いすることができて嬉しいかぎり。また機会があれば、やりたいと思いますので、よろしくお願いします。

そうそう9月23日には、東京で「文藝家協会」さん主催のトークサロンもあります。こちらもよろしくお願いします。詳細は、以下リンクです。

イベント情報 | 日本文藝家協会

「シンゴジラ」で発見「エアクオート」

遅ればせながら「シンゴジラ」を見てきたのですが、このなかで『似ている英語』で紹介した「エアクオート」が出てきて、密かに感動したのでご報告です。

「エアクオート」とは主にアメリカで多用されている「両手のピースをクイクイと曲げる」仕草で、話しことばに〝〟を付ける効果がある。主に、皮肉や疑問、嫌味を意味する単語に用いるのだが、たとえば彼女を付け回している男が「偶然、彼女の家の前で会った」と伝え聞いたとする。こんなとき「偶然会ったんだって」と言いながら、偶然を意味する「accidentally」を発するときに、両方の指をクイクイとやるわけです。

 エアクオートの説明は、だいたい上記のようなところでしょうか。映画の中では、アメリカの国務省から派遣されてきた石原さとみさんがクイクイとやっていて「おー!」と、感嘆したのですが、感嘆するのに忙しくて何にたいしてクイクイしたのか、よくわからず仕舞いでしたが、どうも「ゴジラ」という言葉の由来(彼女は「ガッズィーラ」と言ってましたが)が「GOD」であるということに対してクイクイしていたようですね。本で書いたことが実践されていると、いつも密かに感動しています。『シンゴジラ』これから見る人は、この「エアクオート」にも注目してください。こんな英語雑学がいっぱい詰まった『似ている英語』は好評発売中です。

似ている英語

似ている英語

 

 あと、次の日曜日(11日)に迫った京都丸善本店のトーク&サイン会もよろしくお願いします。申し込みなどの詳細は以下になります。

「君の名は。」に聖徳記念絵画館を見に行く

先週、長らく制作に携わっていた『聖徳記念絵画館オフィシャルガイド』が出版され「さて、絵画館の宣伝をせねば」と考えていたところ、今、大ヒット中の映画「君の名は。」に絵画館が描かれており、聖地巡礼として見に来てる人がいるってことを知りました。ほー!これはなんか朗報!

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アニメサイトから画像拝借すると、そうそうこの背景にあるのが絵画館! この手前に見える横断歩道との位置関係からすると、微妙にこういう場所はないようにも思うけれど、建物は間違いなく絵画館! というわけで、さっそく映画を見てきました。

映画の設定は、二人の高校生が、男女入れ替わり、時空を超えと、なんとなく既視感があるうえ、細部もつながっていないようにも思うのですが、映画全体の疾走感で「細かいことはいいんだよ!」と思わせてくれます。

そして何より、新宿、四谷、外苑あたりといった東京の風景が、とてもきれいなのが印象的。東京は、そうそうこんな感じで雑多だけど、きれいじゃん! かっこいいじゃん! そう思わせてくれるのが素晴らしかった。そういう意味では、この映画の主役は背景かもしれません。いろいろ魅力的な場所が映っており、数カ所は、もうファンがたくさん足を運んでいるようですが、そのひとつの聖徳記念絵画館にもぜひ足を運んでみようじゃないですか!「あそこ、入れるの?」という人が多いですが、誰でも入れますので。入館のお供には、ぜひこの本を。本書持参で、入館に必要な500円も不要となります。

聖徳記念絵画館オフィシャルガイド: 幕末・明治を一望する

聖徳記念絵画館オフィシャルガイド: 幕末・明治を一望する