おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

昭和と平成のオムライス、食べくらべ。

『くらべる時代 昭和と平成』のカバーを飾るのは、日本橋たいめいけん」のオムライスです。

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こちらが「オムライス」。昭和からある王道の形ですよね。これに対し平成になってとろとろの卵が乗せられたオムライスをよく見るようになりましたが、その端緒だと考えたのが、同店の「タンポポオムライス」です。

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このようなオムレツが乗った形で出てきますが、ここにナイフを入れていきます。

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スーッと切っていく。

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そして卵を開いていく。

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とろとろ^^ 美味しそう。この「タンポポオムライス」の名前の由来は、昭和60年に公開された故・伊丹十三監督の『タンポポ』という映画のタイトルから。同映画にホームレスの男が厨房に忍び込んでオムライスを作るシーンがあるのですが、この撮影に協力した縁で、この名前を採って同店の名物になったのです。YouTubeで探したらあったあった。これですこのシーン。


たんぽぽ すごく美味しそうなオムライス作り

 日本映画の名シーンですね。

たいめいけん」のこの2つのオムライス、見た目だけじゃなくて具材も異なれば味もかなり違います。ぜひ食べくらべてみてください。

たいめいけんのオムライス食べくらべといえば、平松洋子さんの『サンドウィッチは銀座で』(画は先日お亡くなりになった谷口ジローさん。お疲れ様でした。)。この中に「いつもこころにオムライス」という一編があり、たいめいけんでこの両者(+牛肉のオムライス)を食べるシーンがあり、こちらも楽しい。

平松さんは、大阪心斎橋の「明治軒」にまでオムライスを食べに行っておられます。

《「オムライスを知ろうというなら、ぜったい食べずにすませられない味が心斎橋にある。これは酔狂なんかじゃない、一途なオムライス賛歌」》とまでいわしめる味。この店か。

串カツもセットになっているのだとか。ほー。今度、行ってみよう。オムライス探訪、ちょいちょい続けてみようかと思います。

くらべる時代 昭和と平成

くらべる時代 昭和と平成

 

 

 

3/24 文芸トークサロンで「くらべる時代」のお話します

「くらべる時代 昭和と平成」おかげさまで、各地で好評いただいてまして、3月24日の金曜日には日本文藝家協会さんのお招きによるトークサロンに登壇することになりました。

紀尾井町文藝春秋ビルで1500円、ドリンク付。ビールやワインが飲めます^^ 昭和と平成の写真を見ながら時代の移り変わりを話そうという会でして、山出カメラマンも同席してくださるので、撮影苦労話なども話したいと思います。それと今回は、手話の同時通訳の方が同席してくださるとのことで、聴覚障害の方にも参加していただけるのだとか。初めての体験で楽しみです。お時間ありましたらご参加くださいませ。

詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

イベント情報 | 日本文藝家協会

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くらべる時代 昭和と平成

くらべる時代 昭和と平成

 

 

なぜ卓上ポット(魔法瓶)から花柄が消えたのか?

昭和と平成の違いを34の項目で比較してみた「くらべる時代 昭和と平成」。昨日、発売になりましたが、そのなかで印象的なネタのひとつが卓上ポット(魔法瓶)の昭和と平成です。

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そうそう。昭和のものってこういった花柄でしたよね。昭和42年に花柄のものが大ヒットして、それ以降、魔法瓶といえば「花柄」というくらいスタンダードになりました。しかし、軽くて丈夫なステンレス製(これ以前はガラス製)が登場すると、花柄が姿を消します。これはガラス製は外側にカバーがあり、そこにプリントできたけれど、ステンレスには、こういった印刷が難しいためなのだとか。上の昭和と平成のポットは容量は同じですが、この外側カバーがなくなった分だけ平成のものはコンパクトになっています。

撮影に協力してくださったのは象印マホービン株式会社が運営される「まほうびん記念館」。同社のサイトでは、花柄マホービンのイラストがダウンロードできる素敵なサイトがあるのでぜひご覧ください。実に懐かし可愛い!^^

このような昭和から平成にかけての変化を知ることができる「くらべる時代 昭和と平成」。よろしくお願いします!

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amazonこちら。書店さんでも、ぜひぜひお求めてください。こんなPOPも飾ってあるかもです♪

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「東西でネコの尻尾が違う」が「フルタチさん」で検証された話

『くらべる東西』で「東と西ではネコが違う」という話を紹介しました。

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 パッと見ただけだとわかりませんが、これ尻尾が違うんですね。「東のネコ」は、先端が曲がった「カギ尻尾」が多い。「西のネコ」は、尻尾がまっすぐが多い。この違いは「猫又(ねこまた)」という化け猫伝説に由来しているとされています。

猫又とは、尻尾が二つに分かれている化け猫で、尻尾が長い猫が長生きすると(20年以上といわれています)これに化けるとされていました。このため、この猫又伝説が強く信じられていた江戸では、尻尾がまっすぐなネコが忌避され、尻尾の短いネコや、尾が曲がっているネコが好んで飼われたというのです。この尻尾が曲がったネコというのは、もともと日本にはおらず、当時、日本と交易していたオランダ船が、航海の途上、ジャカルタで乗せたものとされています。

さて、こういう話だったのですが、本当に関東と関西で実数に違いが見られるのか、僕も数えたわけではありませんでした。

それが年末「フルタチさん」という番組のスタッフの方から、このネタを実際に調べてみたいと連絡があり、その放送が1月29日にあったのです。

まず、番組スタッフの方が、東京と大阪の公園などで、実際にネコを50匹ずつ観察した結果《関東の尾曲りネコ率=50匹中26匹/関西の尾曲りネコ率=50匹中7匹》という結果が出ました。

その上、全国の野良猫を6万7千匹も調べたという京都大学名誉教授・野澤謙さんのデータを引用。それによれば尾曲りネコの割合は《東京(23区)=40%/埼玉=51%/神奈川=45%》であるのに対して《大阪=27%/京都=18%/奈良=18%》という結果だったのです。

おぉ! このように関西のネコの尻尾はまっすぐが多く、関東のネコにはカギ尻尾(尾曲りネコ)が多いというのは、実数的にも正しいとわかったのです。

『くらべる東西』の中では「こういう話がある」というニュアンスで紹介していたのですが、今回「フルタチさん」によって、事実に近い話とわかり実に嬉しい。これから機会があれば、東西のネコの尻尾に注目してみてください。

くらべる東西

くらべる東西

 

もうすぐ発売『くらべる時代 昭和と平成』

新刊『くらべる時代 昭和と平成』、ようやく完成しました。

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くらべる時代: 昭和と平成

くらべる時代: 昭和と平成

 

僕は昭和47年生まれですが、昭和のことといえば、つい最近のことのようにも思えます。しかし、昭和から平成の間に、いろいろなものが変化しました。この本では、その変化を、昭和と平成の写真を見くらべることで感じ取ってみようという一冊です。

たとえば「ラムネ瓶」は、昭和の時代、すべてがガラスで出来ていましたが、平成になって飲み口や、そのすべてがプラスチックのものに変わっています。

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日傘も、白から黒に変わりましたよね。

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意外なところで、ボタンも変わっているのです。高価な洋服が売れた昭和の後期はボタンが大きかったのですが、平成になってボタンは全体的に薄く小さくなっています。

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花束も変わっています。花屋さんにご協力いただき、それぞれの時代の象徴的な花束を作ってもらったのですが、こんなにも違うんですね。

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このように今を生きる私たちが、つい見逃しがちな変化に注目しています。

コラムでは「公衆電話の使い方を知らない人が増えた」という話を書いてますが、ほんの一昔前まで当たり前だったことも「伝えようとしないと伝わっていかないんだな」と改めて感じました。

幅広い世代で昭和、平成について話し合う契機の一冊となれば嬉しいです。

来週の月曜日2月27日に配本なので、店頭は早くて28日、通常3月1日でしょうか。

なお、それに先駆けて池袋のジュンク堂本店の9Fでパネル展が今月18日の土曜日から開催されております。若干数の先行発売がありますので、お立ち寄りの際に、覗いてみてください(売り切れの際はご容赦くださいませ)。

というわけで「くらべる時代 昭和と平成」よろしくお願いします。

❇︎献本させていただいたビアガーデン仲間の和田さんが、素敵な紹介記事を書いてくださいました(ありがとうございます^^)本の概要、こちらでも感じてください。

あと、前作は、こちら。最近、テレビでここで紹介した東西のネコの違いが取り上げられ、ちょっとした反響でした。東西のネコ、尻尾が違うのです。

くらべる東西

くらべる東西

 

『スズメの謎』(2017読書6)

何気なく手に取ったこの本、素晴らしかったのでご紹介。

スズメの謎―身近な野鳥が減っている!?

スズメの謎―身近な野鳥が減っている!?

 

 今「わからないこと」に関心があるのです。といっても宇宙の果てとか、そりゃわからないだろうけどそんな縁遠い話よりも、もっと身近で素朴でわからないこと。調べてもお金になりそうもないから放っておかれているようなわからないこと。そんな「わからないこと」ないかなと手にとったこの本では、冒頭で鳥類の研究をしている三上修さんが「スズメが日本に何羽いるのかわからない」と書かれていて「なんと面白い!」と感動しました。

この本は、三上さんがこの命題について、どうやって調べたのかが、とてもわかりやすく書かれています。スズメという身近な鳥の生態を知る面白さももちろん味わえますが、考えること、調べることの醍醐味が詰まった実に魅力的な一冊でした。

《科学というのは、世界を理解するためのものです。科学のすばらしいところは、難しくいうと現象を一般化できることです。もっと噛み砕いていえば、なるべく少ない情報で、世界を説明しようという試みだといってもいいかもしれません》

こんな一節など、科学、学ぶことに対する説明もわかりやすい。

なぜ三上さんがスズメを調べることにしたのかというこんな一節が感慨深かった。

《鳥の研究をもっと多くの人に楽しんでもらわないと「自分が食べていけなくなる」と思ったからです。最近の科学というのは、くわしくわかればわかるほど、その専門性が際立ってきます。そうすると、門外漢の人には何をやっているのかわからなくなってきます。それでも、医療のように人のために役立ったり、発明が産業につながったりする場合はよいのですが、そうでない研究分野は、衰退していくことが多いのです。芸術にしても、文化にしても、価値はあっても、一般の方に受け入れてもらわないと、その分野そのものが土台から崩れさってしまいます。ですから、一般の方にも鳥類学を楽しんでもらうことで、自分が生きていく道を少しでも書いたくしようとしたのです》

研究も「楽しんでもらう」という意識、大切ですよね。ふむ。

『オーロラの向こうに』(2017読書5)

写真絵本のようなものを、いつかやってみたいと思っていてよく手にするのですが、これは実にいい作品でした。

オーロラの向こうに

オーロラの向こうに

 

 作者は松本紀生さん。アラスカのマッキンリーの麓に、オーロラの写真を撮るために、単独で彼の地にキャンプを張って1カ月以上過ごしているという人。もう10何年もこういった活動をされている松本さんが、初めてアラスカで生活した記録が、この絵本の幹。きれいなオーロラを見せるというよりも、なぜ松本さんがこんな挑戦をしようと思ったのか。アラスカでのキャンプ生活はどういったものかを見せてくれる。感慨深いのは、この最初のアラスカの旅ではオーロラは結局、現れなかったのです。でも、松本さんは「やりたいことに精一杯取り組んだから、最高の気分だった」と振り返る。

とても勇気が出る本です。子供向けだから読み聞かせにもぜひどうぞ。うちの10歳の息子がいたく感動していました。夏と冬はアラスカに行っている松本さんですが、それ以外のシーズンは講演活動をしているので、小学校などにきてもらってもいいんじゃないでしょうか(もちろんお金の応援という意味も込めて)。

僕、なんか見たことあるなーと思っていたのですが、そうか「情熱大陸」で放送されていたのか。改めて見たけどこちらもよかったです。


情熱大陸 松本紀生 2014年3月23日 140323