おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

「大学イモ」のこと関西では「中華ポテト」と呼びますかね

『くらべる東西』を出してからも「東西ネタ」に関する興味は尽きず、いろいろ調べております。そんななか、こんな2冊の本で知ったネタをご紹介。

方言と地図 (ピクチャーコミュニケーション)

方言と地図 (ピクチャーコミュニケーション)

 

子どもが見ても楽しいだけでなく、ネタも深く素晴らし本でした。このなかで関東の「大学イモ」を関西で「中華ポテト」と呼ぶと書いてあったのですが、初耳。「メンチカツ」を「ミンチカツ」と呼ぶのは、なんとなくわかるというか、僕は関東にくるまで「メンチカツ」というものを知りませんでした。味の表現でいえば《西の「からい」に東の「しょっぱい」》はなるほどなと。そんななかいちばん惹かれたのは、角もち、丸もちの東西対比が、北海道の中では混在しているというお話。

f:id:okataco:20170805091856j:plain

丸もち、角もちも北海道ではご覧のように混在。北海道には、明治以降、内地の人が集団で移住したので関東文化と関西文化が混在していることは知っていたのですが、どこが関東、関西というのは、明確にわかっているのですかね。これをぜひ調べてみたいと思っておりまして東西の第二弾の際には、北海道遠征できないかと画策しております。

次にこの本。

世界を読む

世界を読む

 

 地理学の視点から世界を読み取るというこんな本にも東西の違いが少し載っていました。

関ヶ原以東では「イエ」という人が多く以西では「ウチ」という人が多く、明後日の翌日を西日本では「シアサッテ」というが、ほぼ糸魚川ー静岡戦より東では「ヤノアサッテ」という》

「ヤノアサッテ」ということば、何かで目にした記憶が……という感覚しかなかったのですが、関東のことばだったのですね。いろいろ深い。これからも調べて参ります。

そうそう。東西ネタといえば、我々「くらべる東西」コンビもロケに参加したNHKの《中部 境界線ワンダーランド》が、明日6日、日曜日の午後1時5分から再放送あります。中部地方のみの放送ですが、前回見逃した方、ぜひご覧くださいませ。

www4.nhk.or.jp

「クイズ!オトナVSこども」に『目でみることばのずかん』

明日、5日土曜日の午後1時30分〜午後3時まで、フジテレビで「クイズ!オトナVSこども」という番組が放送されます。

クイズ!オトナvsこども - フジテレビ

坂上忍上地雄輔MC!天才キッズVS芸能人クイズバトル》

ということのようなのですが、この問題のひとつが『目でみることばのずかん』から出題されると連絡をいただきました。

どんな問題かは放送をお楽しみに♪ 僕もクイズは大好きなので放送が楽しみです。

ちなみに『目でみることばのずかん』はこんな本。

f:id:okataco:20170804090410j:plain

『目でみることば』シリーズから、子ども向けに再編集したもので、いろんなネタが載っています。

f:id:okataco:20170804090443j:plain

これは、ことばネタの「いもづるしき」。

f:id:okataco:20170804090459j:plain

これは漢字ネタの「生」。このほか「似ていることば」「似ている英語」のネタも収録。大判で見やすく総ルビなので、お子さんも読めます。読み聞かせに使うのにも最適なので、ぜひ一度手にとってみてくださいませ。

目でみることばのずかん

目でみることばのずかん

 

「安い」と「高い」の違いがわかる『くらべる値段』

新刊の『くらべる値段』完成しました。早いところでは8月6日あたりから書店の店頭に並ぶと思います。

f:id:okataco:20170801152524j:plain

「安いものと高いものは何が違うの?」と疑問に思った経験は誰にでもあるかと思うのですが、そんなハテナ?に答えるのがこの本です。

f:id:okataco:20170802095642p:plain

たとえば「うな重」。松、竹、梅などと値段の違いがありますよね。「今日は奮発して美味しいのを食べよう!」と松を頼む人もいるでしょうが、うな重の値段の差は、その量によって生じています。このように写真で見比べれば一目瞭然。写真の「うな重」昨今にしてはとてもリーズナブルですが、これは日本橋にある「いづもや」さんのもの。こういった撮影場所の紹介を毎回楽しみにしてくれる方がたくさんいて嬉しいです。

f:id:okataco:20170802095604p:plain

サッカーボールも値段の差がありますよね。ご覧のように同じメーカーの同じブランドでも価格差がある。これよく見るとわかるのですが、5200円のものは糸を使ってパネルとパネルを縫い合わせていますが、高いものには糸を使った形跡が見られません。これは熱接合でパネルとパネルを貼り合わせているのです。こうすることで糸から水を吸収することを防ぎ、完全な球体に近づけることができるのだとか。

f:id:okataco:20170802103158p:plain

カニ缶は「全部高い!」と思っている人もいるかもしれませんが、同じ種類のカニでも値段の差がある。これはこのように脚肉の部分を使っている割合によって変わります。

f:id:okataco:20170802103320p:plain

コーヒー豆も値段違いますよね。右の100g2000円の豆は誰もが名前は聞いたことのあるだろう「ブルー・マウンテンNO.1」。ブルマンはジャマイカ政府が管理しているため、エラー豆の混入率も限りなく低く見た目も艶々。ブルマンが高いのは伊達ではないのです。

f:id:okataco:20170802103606p:plain

椎茸は、傘が開かず裏側の膜が残っているものが高価とされます。ただ、味に関しては傘が開いているものが美味しいという人もいるので、価格が味と比例するかは別問題なのだとか。

f:id:okataco:20170802122448p:plain

寿司の値段の差はどうやって生まれるのか。2000円と5000円では、量の差はそれほどでもありませんが、ネタのクオリティが違う。同じマグロ、エビ、玉子でも、高価なものは高級なネタが使われています。でも、腕のよいお寿司屋さんは、値頃なネタでもいい仕事で美味しくしてくれますね。

f:id:okataco:20170802122700p:plain

今回、驚いたもののひとつがこの炭。900円の炭は、マングローブを使ったインドネシア産。充分な時間がかけられていないので、しっかり炭化しきっていないことから、煙が出て臭い。バーベキューの臭いが嫌な人は、ちょっと高い国産品を買ってみてください。もう全然違います。僕は、この国産の炭の良さを知ってから家で七輪を始めたのですが、いいですよー!

このほか「胡蝶蘭」とか「花火」とか「バナナ」とか「ギター」とか「革靴」とか「シャツ」とか「万年筆」などなど34の品々の安いものと高いものを、取材に行って写真にとり、このように見くらべてもらうことで、その差を知ってもらおうとしております。すべてのものにおいて高いもののほうがいいという主張ではありません。安いものにはこんな工夫があったの!という発見もあり、個人的にこの取材を経て知ったことはとても多いですし、これからの人生の役にたつことが多かった。

きっと読んでくださった方も、ものの見方とか、作り手に対する想像力とか、何か変化をもたらすきっかけになる本になるのではないかと思っております。ぜひ手にとってみてください。

f:id:okataco:20170802123746p:plain

こんなPOPを作りましたので、御入り用の書店さんありましたら、コメントなどくださいませ。

くらべる値段

くらべる値段

 

 この「くらべる値段」は、「くらべる」シリーズとしては第三弾になります。前回は、昭和と平成をくらべたこちら。

くらべる時代 昭和と平成

くらべる時代 昭和と平成

 

 その前は、東西文化の違いをくらべたこちらです。

くらべる東西

くらべる東西

 

 既刊も併せてよろしくどうぞ。取材のご依頼などお気軽にお願いします。8月6日に経堂の「さばのゆ」で発売イベントもやりますので、詳細以下のリンクからお願いします。

sabanoyu.oyucafe.net

模造紙は何を「模造」しているのか? 『数字が語る現代日本の「ウラ」「オモテ」』

実に面白い本でした。

数字が語る現代日本の「ウラ」「オモテ」 (学研新書)

数字が語る現代日本の「ウラ」「オモテ」 (学研新書)

 

 著者は、中学校の先生なのですが、いろんな数字を面白がるセンスが、とてもよかった。備忘録も兼ねて目次を紹介していきます。

《富士山の標高は今でも本当に3776メートルなのか》

九州でいちばん高い山というのは、もともと久住山だったけれど、登山客で賑わって山頂の岩場が崩壊するなどして次々と変わっているのだとか。データって「変わらないもの」と思いがちだけど、次々と変わっていると改めて気付かさせてくれます。富士山の高さも同様で、変わりそうな契機がなんどもあったけれどなんとか3776を守っているのだそうです。

《今、国産農産物の輸出が増えている!りんご2.8倍 米9.5倍 いちご28.7倍》

食料の輸出入の話題になると、とかく外国に頼っているという論調一辺倒ですが、実は国産農産物で輸出が増えているという面もあるというお話。「ドバイの太陽」と名付けられた鳥取産の高級スイカが、現地で大人気というのはなかなかよいですね。青森リンゴは、台湾などでも大人気なのだとか。

《東京都心(中央区)の人口増加率35.7%が全国1位になった異変》

昔、都心の人口が減るという「ドーナツ化現象」というのがありましたが、21世紀になるとこれと逆に都心の人口が増えるようになったという。これを「あんぱん化現象」と呼ぶのだそうです。

《日本一大きな水車と日本一長い夢の大吊橋》

日本一大きな水車というのが、15年間で10回も更新されており、1991年だけで3回も日本一が変わっているそうです。鋭い人は、この年代だけでピンとくるかもですが、これの発端は、全国の市町村に1億円を地域振興資金として交付した竹下内閣の「ふるさと創生事業」なんですね。

《東日本に157万人いる鈴木さん、なぜ西日本にはたった13万人なのか》

激しくうなづいた指摘でした。僕、京都生まれの京都育ちなのですが、正直「鈴木」という人が、全国1位といわれるほどに周りにいなかったんですよね。それこそ「鈴木くん、佐藤くん」なんてお菓子も出ていましたが、そんなにいる?と思っていたところ、やはり鈴木は関東に多い姓なのだとか。関西に多いのは「田中」で、これは稲作が昔は関西で盛んだったことの名残りだとか。中村は、稲作を行う村の中心。「井上」は新田開発のために掘られた井戸の周辺を意味して、これも関西に多いのだとか。なるほど!

《壁新聞に使う白い大きな紙の呼び名は、模造紙72%、B紙15%、鳥の子用紙7%》

この項で「学校方言」ということばを使われていましたが、鹿児島などの九州で黒板消しを「ラーフル」と呼ぶなど、たしかにそういうものって多いですよね。「模造紙」もそのひとつで、上記のように名前が違うのだとか。僕にとっての驚きは「模造紙って何を『模造』しているのか?」に、この文章を読むまで気付かなかったこと。『目でみることば』を作っていたとき「葛藤」ってなぜ「葛」と「藤」って書くの?など、この手のネタを徹底的に考えたのだけど、まだまだあるなー。《「雁皮」というのは昔からの和紙の原料であり、その和紙の一種に「鳥の子紙」と呼ばれる紙がある。その「鳥の子紙」に似せて、つまり模造したから「模造紙」》なんだとか!

いろいろ勉強になったいい本でした。

そういえば「目でみることば」は、夏休みの自由研究に使えるので、興味のある方、以下の記事ご覧くださいませ。

okataco.hatenablog.com

「中部境界線ワンダーランド」と「くらべる値段のカウンター」

今年の春先に『くらべる東西』を読んだというNHKのディレクターさんから「東と西の間がどうなっているのかとても興味があります」と連絡がありました。

くらべる東西

くらべる東西

 

たしかに「くらべる東西」には、関東と関西のことは載っていますが、その間がどうなっているかは載っていない。それで、その間の中部、北陸のことを調べるため、私たち「くらべる東西」コンビもロケに参加した番組が明日放送になります。

この「金とく」という枠の「中部 境界線ワンダーランド」(以前ご紹介したタイトルと変わっていました^^;)。明日7月28日、NHK総合(富山・石川・福井・愛知・岐阜・三重・静岡)午後7時56分~ 午後8時41分です。放送地域が限られていますが、見られる方ぜひご覧ください。あと番組ご覧いただいた方、興味もたれましたらぜひ『くらべる東西』も手にとってみてください。 

 

それとシリーズ最新作の『くらべる値段』がまもなく発売になります!

f:id:okataco:20170727104208p:plain

「高いものと安いもの。何が違うの?」という本。詳細はまた近々ご紹介いたしますが、この発売を記念して、経堂にある「さばのゆ」で「くらべる値段のカウンター」というちょっとしたイベントをやります。8月6日、午後7時から、カウンターでゆるゆる飲みながら、本を手売りしていますので、お近くの方おられましたら是非とも。詳細、以下のリンクからご覧ください。

facebookはこちらから。

「くらべる値段」のカウンター

では、いろいろよろしくお願いいたします。

誤解されやすい方言小辞典

『くらべる東西』を出版以降も、東西文化の違いや、日本文化の地域性に興味津々ですが、先日読んだこんな本が、なかなか面白かったのです。

東京のきつねが大阪でたぬきにばける 誤解されやすい方言小辞典

東京のきつねが大阪でたぬきにばける 誤解されやすい方言小辞典

 

 たとえば、こんな話が紹介されています。

「いか」という項目では

《新潟から北陸・近畿、さらには中国・四国の一部へと続く一帯では「凧」のことをあらわす。江戸時代の方言集には、関西で「いか」関東では「たこ」との記述があるが、都が近畿圏に置かれていた時代から「いかのぼり」が標準的な言い方とされていたようである》

なるほど。「たこ」のこと「いか!いか!」って言ってたら誤解されますよね(笑)。こんな話がいろいろ紹介されているのですが、個人的に面白かったものをメモがてら紹介すると……。

◎「おさがり」=京都では「雨が降ること」

僕、京都出身で、今でもちょいちょい帰りますが、これは初耳でした。

◎「しみじみ」=茨城、千葉の一部では「しっかりした」こと。

「しみじみ掃除した」などと言われると、たしかに誤解する(笑)。

◎「ぜんざい」=沖縄では「甘い金時豆と白玉の上の上にかき氷をかけたもの」

これは以前から聞いておりまして、いつか企画の柱のひとつにしたいと思っております。この夏、どこかで食べてみたい。

◎「だいて」=富山では「おごる」の意味。

これは誤解されるなー。

「たからもの」=北海道・東北地方では「なまけもの」「役立たず」の意味。

これも誤解されるねー。

◎「はんごろし」=東北から中部の広い地域で「ぼた餅」の意味。

「ころす」が「つぶす」の意味だからなんですね。

◎「みずまし」=東北では「洪水」の意味

◎「わに」=島根・広島では「さめ」の意味。

これも有名ですね。いつか当地のスーパーで「わにの刺身」買ってみたいです。

個人的に誤解していた方言は「邪魔臭い」です。関西の邪魔臭いは「面倒臭い」ですが、東京に来たら「そのイス、邪魔臭い」と言っていて驚きました。「それフツーの邪魔やん」とかなり衝撃でしたが、こんな「誤解」のことば、まだまだたくさんありそう。

さてさて、このように日本の地域文化の多様性はとても面白いのですが、そんなところにスポットを当てた番組がまもなく放送になるのです。

「中部の境界線~食・住・言葉のサカイメを追え!~」
2017年7月28日(金)19:56~20:40 NHK総合(中部圏内=富山・石川・福井・愛知・岐阜・三重・静岡)

実は、こちらの番組に『くらべる東西』コンビとして、僕と山出カメラマンがお呼ばれして、ロケをしてきました。中部地方は、関東と関西のどちらの影響を受けているのか――そんなスタンスで調査に行って来ましたので、放送、ぜひご覧くださいませ。

また放送日、近くなったらお知らせいたします。

くらべる東西

くらべる東西

 

 

将棋は、教育の基本「見守る」ことを教えてくれる。

【子供たちは将棋から何を学ぶのか】という連載コラムにいい話があったのでご紹介しておきます。

www.shogi.or.jp将棋の大会では親の応援は禁止で、声も出せずただ見てるだけ。でもこれが《将棋をする実体験は、教育の基本「見守る」ことを教えてくれるのです》とは、なかなか鋭い指摘。サッカーの試合でも、ずっと子供に指示出し続けるお父さん&お母さんもいるけど、試合中に叫んだところであまり効果ないし、逆効果のケースも多々ある。負けも失敗もじっと見て、試合帰りの風呂の中とか、子供が聞く姿勢になったときに「あのさ……」とちょっと言ってあげるくらいがちょうどいいもの。教えられることなんてほとんどなくて「見てるよ」という姿勢だけでも、子供には充分なのかなと思うことは少なくありません。