おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

「長寿県」1位と最下位の差は3歳ほど

文春の2/1号に《「長寿県」に学べ 決定版》という記事が興味深かったのでご紹介。

記事の導入は2017年の12月に厚労省都道府県別平均寿命を公表したというもの。

これは5年ごとに全国調査されているもので、今回、男性の長寿1位が5回連続長野県に代り滋賀県になった。順位、このようになっています。

《男性》1位・滋賀/2位・長野/3位・京都/4位・奈良/5位・神奈川

《女性》1位・長野/2位・岡山/3位・島根/4位・滋賀/5位・福井

 それで上位圏の躍進の秘密として以下のようなことが書かれていました。

滋賀県

◎喫煙率(男性)が全国最低

◎名産「鮒寿司」で健康増進

◎ビワイチ(琵琶湖一周)運動

山梨県

◎「無尽」(鎌倉時代から続く独自の「講」。もともとは仲間を助ける融資制度で現在ではサークル活動のような集まりを指す)参加が県民に浸透

◎1日の平均食事時間が全国1位

◎マグロの消費量が全国2位

《愛知県》

◎健康マイレージでポイント獲得

◎ご当地体操「あいち巡りん体操」

◎野菜生産量全国1位(摂取量は男性最下位)

岡山県

◎日本一「晴天」の県

◎図書館個人貸出数が全国1位

 こうやって書いてみて改めて思うのですが、県単位の長寿の原因など、なかなかわかりやすいものとして表出しないんですよね。滋賀の友達に聞いても「そんなに鮒寿司食べないよ」と言うしねぇ。

実際、このデータをよく見ると、男女ともに最下位の青森県と1位の差ってごくわずかなのです。

《男性 1位滋賀=81.78歳/47位青森=78.67歳》その差=3.11歳

《女性 1位長野=87.67歳/47位青森=85.93歳》その差=1.74歳

 男性で3歳ちょっと。女性なら2歳もない。

今年はずいぶんと寒い冬ですが、これだけ寒いと外に出る気もなくなって、いろいろ体に影響は出るでしょう。それでも寒い青森と1位の県の差がこれだけしかない現状は、むしろ青森ってよくやっているとか、小さな要因が引き起こす差異などごくわずかでは?という結論にもなるような気もします。

ま、とはいえこういった県民性は、面白くもあり新しい発見もある。

www.youtube.com愛知県の「あいち巡りん体操」ってこんなのか。全国のご当地体操をくらべてみても面白いかもしれません。

適サシ肉と向笠千恵子さん

2月1日に浅草の老舗すき焼き店「ちんや」さんで開催された「適サシ肉宣言一周年記念 この辺りでもう一度肉のことを考えてみる会」に参加してきました。

過剰な霜降り肉が尊ばれる傾向にあるなか、「ちんや」さんで「適度にサシの入った肉を提供します」というPRとしてちょうど1年前に宣言されたのがこの「適サシ肉宣言」。この宣言から1年を経て、改めて肉のことを考えようというシンポジウムとすき焼きを食べる会という2部構成でした。

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シンポジウムの様子。奥から2人目が「ちんや」のご主人の住吉さん。お肉業界のお歴々がお話しされるなか、個人的な感動は、奥におられる向笠千恵子さんのお話でした。向笠さんといえば、この朝ごはんの本。

日本の朝ごはん

日本の朝ごはん

 

僕の中で「地方食」の面白さを認識した大きなきっかけとなった一冊でした。丁寧な取材ぶりも含めて大変尊敬していたのですが、今回のお話しでも凛とされていて素晴らしかった。「すき焼きでは、仲居さんの技も見逃せない。彼女たちがすき焼きのヒロインで、彼女のたちの後継者が育たなくてはすき焼き文化は廃れる」とおっしゃっていたのが、かっこよかったです。素晴らしい文筆家の先人にお会いすることができて、とてもよい機会になりました。

すき焼き通 (平凡社新書)

すき焼き通 (平凡社新書)

 

こちらの向笠千恵子さんによる「すき焼き本 」もとても面白いので、ぜひ手にとってみてください。

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今回もおいしいお肉でした。このような昔から愛されている肉は「小豆色」とされています。美味しさの本質。それを支えてきた各地方に根ざす文化。大事にしていきたいテーマですね。

『東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!』が面白すぎ

京都に実家がある関係で、東海道新幹線に乗って東京と京都の間をたびたび行き来します。僕は、新幹線に乗っているのが好きだからあまり寝ずに、本を読んで、ビール少し飲んで、窓の外を眺めるのが好き。子供と一緒に乗るようになってからは、「面白いもの見つけよう」と一緒に見ている。見ているといろんな発見があって、印象的だったのは、恐竜の像。なんでも強化プラスチックを販売している会社がPRのために掛川と浜松の間にある「袋井」というところに設置したもののようですが、2014年に撤去されたのだとか。これ子供と発見したとき大喜びしたんだよなぁ。ただこの時の体験があったので、新幹線の車窓を紹介した本を作れば面白いのではないか――と思っていたら、こんな本が出ていた。僕は、類書が出ていてもその完成度が今ひとつならば、気にせずに作るタイプですが、この本はとてもよくできています。傑作!

東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!

東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!

 

このカバーのイラストだけでもワクワクしません?^^

「プチプチ」という立て看板があるのですが、そのことについて書いておられた著者・栗原さんのネット記事があった。

車窓の写真だけでなく、現地に赴いてのルポもある。情報満載でオールカラー、たったの1000円。素晴らしすぎて感服です。新幹線に乗るまえにぜひお買い求めください。

僕は<目撃難易度★★★★★>という「米原のトトロ」(岐阜羽島米原)(のぞみで名古屋から16分、のぞみで京都から17分の地点)をぜひ発見したいと思います!

shigatoco.com

<我々が人々を叱責するのは優越感にひたるため>『悩める君に贈るガツンとくる言葉』

敬愛する石原壮一郎さんのこの本に、記しておきたい言葉がありましたのでご紹介。

悩める君に贈るガツンとくる言葉 (大人養成講座)

悩める君に贈るガツンとくる言葉 (大人養成講座)

 

 いろんな方のお悩みに対して、賢人41人の金言をもって回答していくというスタイルですが、なかでも印象に残ったのが、フランスの文学者ラ・ロシュフコーのこんなお言葉でした。

我々が過ちを犯した人々を叱責するときの動機は、どちらかというと善意よりも傲慢によることの方が多い。つまり相手の過ちを正すからというより、自分だったらそんな過ちはけっして仕出かさないということを誇示し、優越感にひたるためにする。

この本は、もともとネット連載されたものをまとめられたこともあり、このようなネット社会への警鐘が印象的。「ネットの中で大暴れする快感に日々溺れている」という相談者にはスティーブン・キングのこんな言葉を引いておられます。

ウンコ投げ競争の優勝者は、手がいちばん汚れていない人間だ。

ここ数年で一気に誰もが発信できる時代になりました。一気に車社会になった昭和30年代、それこそ「交通戦争」などと呼ばれたときは、交通事故の死者数がとんでもないことになっていた。今は、そんな時代に似ているように思います。誰もが発信できるようになったからこそ、発信することの意味、ルール、安全のために必要なことを、こういった著作などから学んでいきたいですね。そんなとき「ルール」ではなく「マナー」として定着させられればなぁと。

この原稿で、書店「Title」の辻山さんが《マナーは明文化されないところにその価値があります》と書いておられた。今後「発信するマナー」が醸成していくことを願うばかりです。

あけましておめでとうございます&新春時代劇『風雲児たち』

あけましておめでとうございます。さて、新年早々ですが、今日放送だった新春時代劇『風雲児たち 蘭学革命篇』が素晴らしかったのでメモっておきますが、みなもと太郎先生の『風雲児たち』を、三谷幸喜さんが脚本を担当した今日のドラマ。大傑作だったのではないでしょうか!

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苦難続きの『解体新書』の翻訳。漫画ではこのように描かれていますが、原作の良さを抑えつつも、ドラマらしさも表現されていてさすがでした。次女がたびたびお茶をもって「はかどりました?」と尋ねるシーンも上手に再現されていてよかった。

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この漫画の名場面も上手に変換されていて、原作ファンも大満足の出来だったのではないでしょうか。

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この強情な前野良沢を、片岡愛之助さんが実に上手に演じられておられた。おそらく漫画を何度も何度もご覧になったのではないでしょうか。表情の一端、一端の再現度が素晴らしかったです! 僕の大好きな解体新書の挿絵を担当した小田野直武も登場。彼はこんな絵画も手がけているんですよ。『東叡山不忍池』。

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僕もそうですが、この人のことを『風雲児たち』で知った人は多いのではないでしょうか。昨年小田野直武展があったのですが、風雲児たちファンも大勢来てた。この人のこと、もっと知って欲しいな。そうもっともっともやってほしかった。

限られた時間のなかで、最大限、描き切った今回のドラマですが、まだまだ足りない。そう一番思っているのは三谷幸喜さんでしょう。今回ちょっとだけ出ていた二人。高山彦九郎林子平

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「寛政の三奇人」として並び称されるこの二人は『風雲児たち』の前半の大主役ですが、これも描きたくて三谷幸喜さんはウズウズしているはず。ぜひ続編をお願いいたします!新年早々、素晴らしいドラマ&素晴らしい挑戦を見させていただき幸せでした。

今年の振り返り&来年の抱負

今年最後のエントリーなので、ちょっと振り返りを。

今年も本が2冊出せました。

くらべる時代 昭和と平成

くらべる時代 昭和と平成

 

3月に出た『くらべる時代』は、平成が終わることが正式に発表され、これから平成回顧ブームがくることを見越して出した一冊なので、まだまだこれから宜しくお願いしますね^^ それにしても5月の陽気のなか、崩御なく元号が変わるってどんな感じなのでしょうか。平成、昭和と、これから歴史についていろいろ考える契機が増えるといいですね。

くらべる値段

くらべる値段

 

 8月に出た『くらべる値段』は「適切な値段のものを買おう」というメッセージが伝えられたらと、高いもの、安いものを比較したという一冊でした。北村薫先生からお褒めのことばをいただくなど、各所でよい評価をいただき嬉しく思っております。

この東京書籍から出ている『目でみることば』シリーズ、来年も刊行予定で2月に『くらべる世界』が出ます!世界の意外な違いを山出カメラマンと激写しまくっていますので、楽しみにしていてください。「異文化理解」「おもてなし」にも絶好の一冊になるはずです。

 

毎年、発表している「嫉妬本」大賞ですが、あまりに売れてしまったのでひっそり紹介。

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

 

 愚直なメッセージ。子供にしっかり伝える。そんな本が広く読まれる土台になればなと思います。

 

来年は、本だけでなく、サイトなどでも新しい展開を考えております。

ぜひおつきあいくださいませ。

 

1月1日は正月時代劇『風雲児たち』

明日、1月1日のNHK総合午後7時20分から正月時代劇『風雲児たち』の放送があります。みなもと太郎原作の大河ギャグ漫画『風雲児たち』を三谷幸喜さんが脚本で初のドラマ化。面白くないわけないのであります!

f:id:okataco:20140324153114j:plainこれは『解体新書』が完成したときの名場面。どんな風に再現されているのか実に楽しみです。

以下、番組サイトですが、キャスティングも素晴らしいなー。

www.nhk.or.jpこれは僕の予想ですが、明日のドラマが好評ならば、きっと続編も放送あるはず。幕末を描くために、関ヶ原から描き始めたために、1979年の連載開始から30年以上経った今なお描き続けられているという偉大な漫画。うちの息子も大好きですが、子供たちに歴史を知ってもらうためにも最適な一冊です。ぜひ明日のドラマぜひご覧ください。そして面白かったらぜひ漫画もどうぞ。

風雲児たち?蘭学革命篇?

風雲児たち?蘭学革命篇?

 

 明日のドラマ放送分だけを収録した特別バージョンもあります。ガイドブックもありますよ。

風雲児たちガイドブック 解体新書 (SPコミックス)

風雲児たちガイドブック 解体新書 (SPコミックス)

 

そういえば来年3月に高知県で行われる「まんがで読む!幕末維新展」でみなもと先生がトークショーをされるのですが、その聞き手で僕もお伺いすることになりました。申し込み詳細以下にありますので、興味のある方ぜひ。僕も大変楽しみにしております。