おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

『暮しの手帖』が「装釘」という表記にこだわる理由

『くらべる東西』を『暮しの手帖』で紹介してもらったのですが、そこである気づきがありました。

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デザインを担当してくれている佐藤美幸さんの名前も出ていて嬉しいなーと思っていたとき「装丁」ではなく「装釘」と書いてあることに気づきました。どちらも「そうてい」と読みますが、なかなか「装釘」とは書かない。というか、この表記、初めてみましたよ。

なんでだろ。こだわりなのかなと思い調べると、まさに『暮しの手帖』のこだわりで、それも『とと姉ちゃん』に登場する花山伊佐次のモデルとなった初代編集長の花森安治さんのこだわりだったのです。

装釘には「装丁」「装訂」「装釘」「装幀」と4つの表記があるようですが、花森さんは、それぞれのことばの意味を吟味すると、どうしても「装釘」になると考えたようです。

「幀という字の本来の意味は掛け物だ。掛け物を仕立てることを装幀という。本は掛け物ではない。訂という字はあやまりを正すという意味だ。ページが抜け落ちていたり乱れているのを落丁乱丁というが、それを正しくするだけなら装訂でいい。しかし、本の内容にふさわしい表紙を描き、扉をつけて、きちんと体裁をととのえるは装訂ではない。作った人間が釘でしっかりとめなくてはいけない。書物はことばで作られた建築なんだ。だから装釘でなくては魂がこもらないんだ。装丁など論外だ。ことばや文書にいのちをかける人間がつかう字ではない。本を大切に考えるなら、釘の字ひとつおろそかにしてはいけない」

文末にリンクしたサイトから引用させてもらいましたが、

書物はことばで作られた建築なんだ。だから装釘でなくては魂がこもらないんだ

って、素晴らしいことばだなー! 感服しました。僕も真似てこれから「装釘」と書くことにしよう。というか、出版界は「装釘」で統一してもいいんじゃないでしょうかね。

www.1book.co.jp引用した文は、以下の書籍にあるようです。読んでみよう。我が家は『とと姉ちゃん』録画したのを、家族でゆっくり見てまして、まだ次女がお嫁に行ったところあたりを見ております^^

花森安治の編集室

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