おかべたかしの編集記

読書・執筆・育児の記録と、お知らせと。

『本屋、はじめました』(2017読書3)

2016年1月10日、荻窪にできた「新刊書店 Title」の辻山さんによる開店までの記録。

本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録

本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録

 

 共感するところが多く、とくにこの部分をぜひ多くの人に読んでほしいと思いました。

《<最近思うことは「切実な本」こそ売れているという事です。「真面目な本」と言ってもいいかもしれません。著者が書くしかなかった、自らの底と向き合い、編集者がその想いを汲み取るしかるべき形で包み、それを丁寧な販促で伝えていく。マーケティングの発想からは、そうした本は生まれない。>
マーケティングから売れる本の何が良くないかと言えば、必ず違う似たような本に取って変わられるからです。言ってみれば「替えがきく」という事なので。本は、元は一冊一冊「替えがきかない」はず。替えがきかない「切実な本」にこそ、人の興味はあると思います。>》

これは辻山さんがツイッターに投稿した一文なのですが、この「替えがきかない本」というのが、Titleという書店の特徴を言い表していると思います。

僕は今、本を書いて生活しているので、書店にはよく行きます。企画のための「インプットの場」であるし、大好きな「落ち着く場」であるし、何よりも自分が作った本が売られている「晴れの場」であるし。当然、初めての書店に行けば、自分の本がどこにあるのか探すわけですが、このときいろんなパターンがあります。
そりゃ、平台にドーン!と何面にも置いてあるというのがいちばん嬉しいですが、ま、これはお祭りのようなもの。ジャンルのコーナーに、5冊ほど平積みになっていれば、担当の方が推してくださっているのかなと、嬉しい想いですけど、棚に1冊だと通常がっかりします。でも、棚に1冊入っているだけでも嬉しい書店というのがあるのです。それは、書店の方が、丁寧に一冊、一冊選んで売っていることがわかる棚の店です。まさに、たった1冊でさえ「替えがきかない」本を売っているお店です。このTitleにきたとき、丁寧な棚だな。そして好きな本が多いなと、感じました。
この「好きな感じ」とは抽象的なのですが、今回この本を読んで、僕が好きな理由がなんとなくわかったのです。

《店主が厳選した品揃えを提案する、いわゆる「セレクト書店」というものにも抵抗がありました。自分も客として、さまざまな「セレクト書店」に足を運びましたが、特に最近ではその品ぞろえが似てくる傾向にあり、新しい店なのだけれど既視感が強い店が増えてきたように思います。》

そうなんですよね。僕も同じように感じてて、辻山さんも挙げていた《武田百合子高山なおみ松浦弥太郎》といった方々の本を見かける書店が多くなった。個人的には『父の詫び状』(向田邦子)をよく見かけて「ここも詫び状系なんだなぁ」と思っていたのです。もちろん、こういった本が悪いのではないのですが、こういった本を選ぶと「わかった感じが演出できる」という空気があったように感じていました。

そんな想いがあったときに出会ったTitleの棚は、そういったセレクト系とも異なっていました。選んだ人が浮かび上がるような棚でまさに「替えがきかない」1冊で構成されているのですが、懐かしい町の本屋のような感じもする。頑張ってるけど、頑張りすぎていないというか。そんな空気が、とても気に入りました。

それから折々、ふらっとTitleに足を運ぶようになりました。最寄りの荻窪駅から歩くと10分少し。決して利便のいい場所ではありませんが、この「わざわざ行く感じ」も好き。僕は、企画を考えに行くことが多いので、道中あれこれ考え、Titleの書棚を見ながらあれこれ考え、最後は併設のカフェで書き物をして帰ります。Titleでは著者イベントもやっているのですが、一度、ふらっと覗きに行ったら、別の好きな書店の方にばったりお会いして、イベント後、終電ギリギリまで飲んだこともあったっけ。なんかいい空気があるのです。

この本、「お店を始める人のための本」という側面もあるでしょうが、僕は小さくても「替えがきかない」存在であろうとする人におすすめしたいな。僕もこれからも「替えのきかない本」を作っていこうと改めて思えたのです。がんばろう。

❇︎ちなみに僕が今好きな他の書店は、東京だと神保町の「東京堂」と、新宿の「STORY STORY」と、京王線・柴崎の「手紙社」です。どちらもカフェ併設で本を買ったあと、読んだり書き物ができるのがいいですね。京都だと「丸善本店」。京都マルイの「フタバプラス」も好きでしたが、今月で閉店するようですね。