おかべたかしの編集記

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お気に入りの「目でみることば」その5 不正乗車が「キセル」の理由

お気に入りの「目でみることば」を紹介するコーナー。今回は「雁首を揃える」のサブネタで紹介した《不正乗車が「キセル」の理由》です。

決められた運賃を支払わずに鉄道などに乗ることを「キセル」といいます。パスモなどICカードで乗車する時代となっては、もうほとんど使われなくなった言葉ですが、昭和の終わりころまでは、しばしば「キセル乗車」なんていわれていましたよね。キセルというのは、タバコを吸う道具なんですが、なぜこれが不正乗車を意味するのか、それはその形状に由来しているのです。これが「キセル」。

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このようにキセルというのは、前部の火皿から雁首までと後部の吸い口の部分だけが金属製で、その間は竹でできている。不正乗車の典型例に、乗る駅から次の駅までの切符と、降りる駅のひとつ前からの切符だけを買って、道中の大半の料金をごまかす手口があったことから、前と後ろだけが金属であるキセルの形状になぞらえた――というわけなんですね。

なんともうまく言ったものですが、おそらく隠語なんだろうなぁと。隠語には、このようにわかる人だけわかるものがあって、これはこれで実に「目でみると」面白いのです。『目でみることば 有頂天』に収録。

目でみることば 有頂天

目でみることば 有頂天