おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

久米宏さんの魅力が伝わってくる「ニュースステーションはザ・ベストテンだった」

6月に「久米宏 ラジオなんですけど」のゲストに呼んでいただいたとき、久米さんってすごいなー!と感じたんです。

まず控え室で待っていたとき、CMの合間に突然「こんにちは!」とやってこられたんですよ。突然現れたあの久米さんにこちらはビックリしつつも、緊張がほどけていってとても話しやすかった。あれは久米さん流のゲストとの距離感の作り方なんでしょうねぇ。

あと、やはり本をすごく読み込んでくださっていたことに驚いた。10冊以上もあるなか、どれにも付箋がびっしり。それゆえ、細かいところにまで話は及び、聞いてくださった人からも「すごく面白かった」と言ってもらえた。ま、僕は聞かれたことを、ポツポツと話していただけなんですけどね。(そして本もすごく売れたのです。一生懸命聞いてくださるラジオって、たびたびテレビより実売に結びつくことが多いんですよ)

それで、久米さんって、どういうスタイルで仕事をしてきたのかと興味が湧いて『久米宏です。 ニュースステーションザ・ベストテンだった』という本を読んだのですが、これが実に面白かった。

久米さんの今までの仕事について触れながら、半生を語るといった体裁なのですが、随所にあるインタビューへのこだわりがすごい。「他の人が聞いたことは聞かない」といったスタイルで、長いテレビ生活を送ってこられたことがよくわかった。僕も今まで聞かれたことのない話ばかりで驚いたですもん。久米スタイルは、今でも衰えることなく健在なんだと改めて感じいりました。あとこんな一文も印象的だった。

勘としかいえないが、人気を保つためには、6割の人に嫌われ、4割の人から好感を持たれるのがバランス的にいちばんだと僕は考えている。すべての人から好かれたいとは思わない。みんなに好かれていることは、実は誰にも好かれていないということだ。嫌いになる人がいるから、好きになってくれる人がいる。言い換えれば、嫌われる要素がなければ本当には好かれない。

テレビに出ていると、いろんな反応があるでしょうが、こういう考えて活動されてきたのかと思い至る。

あと、久米さんといえば、最近、NHKに出演して「NHKは国から予算をもらうべきではない」と、喝破されていて注目を集めましたが、それに類する、ニュースステーションの最終回で述べたというこんなことばがありました。

民間放送は原則としてスポンサーがなければ成立しません。そういう意味では脆弱で危険なんですが、僕はこの民間放送が大好きです。なぜなら戦後に生まれた日本の民間放送は戦争を知りません。国民を戦争に向かってミスリードしたという過去が民間放送にはありません。これからもそういうことがないことを祈っております」

なるほど。このような久米宏さん独自のいろんな考えが、往年の番組の面白いエピソードとともに語られる実に楽しい一冊。「乗りかかった船は全力で漕ぐ」という哲学のようで、この本も全力を出されたのだろう。構成を担当された方もかなりの凄腕とお見受けいたしました。傑作だと思います。個人的、タイトルとカバーの写真がもっとわかりやすいものであれば、すごく売れたんじゃないかと思ったけれど、実によい本。ラジオファンの方にも、激しくおすすめですよ。

「目でみることば」シリーズの次回作もきっと久米宏さんは見てくれるだろう。そこで唸らせるものを作らねばというのが、今の僕の大きな活力になっています。ありがとうございましたと改めてここで御礼を。

❇︎ラジオ出演時の模様は、以下のサイトにあります。よろしければ。

www.tbsradio.jp