おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

お気に入りの「目でみることば」その6 「引っ張りだこ」

今日は『目でみることば』の表紙を飾った「引っ張りだこ」のご紹介。人気ものであることを「引っ張りだこ」といいますが、これがタコの干物に由来すると知りました。さて撮りに行こうと思ったところ、この干物を作っているところが案外少なく、東京から至近の場所が、愛知県の日間賀島という島だという。うーん。書籍って予算が厳しいのですが、引っ張りだこが撮れるならば行くしかないと、山出カメラマンと島に向かったのでした。

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おー!島ではこんなタコさんが歓迎してくれます。

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小さな島ですが、路地はこんな感じ。散歩していると……。

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あったあった「引っ張りだこ」! ただ撮影したものの「背景が空のほうがよくない?」と山出カメラマン。たしかにこれなら、この干物を送ってもらって撮影したのと、たいして変わらないし……。そこで島内を探検することに。幸いレンタサイクルがあったので、これを借りて島内探検にGO!

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島の中にはこんなタコ交番が^^

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蛸壺もあったよー。

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そしてついにご対面! カバー写真にもなった青空の下で干されている「引っ張りだこ」くんに出会えたのでした。

「目でみることば」シリーズは、すべて写真を撮るということをコンセプトにしています。大きく謳うわけでもないですが、ちゃんと見てくれた人には伝わると思っています。ただ単にことばを説明するだけでなく「そこにわざわざいく」という楽しさを伝えられたらなと。そんなところも楽しんでもらえたら嬉しいです。

目でみることば

目でみることば

 

 おかげさまで、久米宏さんのラジオに出演以降、本書のご注文をたくさんいただいております。ラジオで「近くの本屋さんから注文してください」と言ったの、少しは効果あったかな。よかったよかった。そういえば、京都の大垣書店烏丸三条店で「目でみることば」シリーズのフェアが始まったそうです。お近くの方、ぜひよろしくお願いいたします。

お気に入りの「似ていることば」その3 「陰」と「影」

お気に入りの「似ていることば」のご紹介。今日は「陰」と「影」です。まず写真を見ましょうか。こちらが陰。

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そしてこちらが影。

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光によって物の後方にできる暗い部分のことが「陰」。地球儀のアジアの部分に光りを当てると、反対側のアメリカ大陸などが暗くなりますが、これが「陰」というわけですね。

一方、光によって映し出される物の形が「影」です。地球儀に光を当てたときに、地面に映る地球儀の形が「影」ですね。

この「陰と影」は、最初から「地球儀」モチーフが頭に浮かび、想像どおりの見事な出来栄え。山出カメラマンのライティングも完璧でした。

こういして学べは違いがよくわかりますよね。 

似ていることば

似ていることば

 

 

お気に入りの「似ていることば」その2 「対称」と「対照」

お気に入りの「似ていることば」のご紹介。今日は「対称」と「対照」です。「対称」とは「釣り合っている」こと。左右対称などといいますよね。一方「対照」は、違いが際立っていること。これを写真で表現するには、どうすればいいか――とても頭を悩ませました。なんの脈絡もない「対称」と「対照」の写真を載せても面白くない。どこかに関連性がないと、つまらないので、考えに考えぬいてひらめいたのです。それがこの「対称」。

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そして「対照」。

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舞台は東京都港区にある増上寺。その本殿は左右対称。そして後ろにある真っ赤な東京タワーとの構図はまさに「対照」的。もともとルーブル美術館にガラスのピラミッドがあり、ピラミッドは左右対称、そしてルーブルとの対比が対照と思いつき、そんな構図が日本にないかと探して巡り合ったのです。

何を撮影すればいいのか、考えに考えぬいた末の「似ていることば」。忘れられない2枚の写真となりました。 

似ていることば

似ていることば

 

 

お気に入りの「似ていることば」その1 「糸こんにゃく」と「白滝」

<お気に入りの「目でみることば」>をたくさんの方に読んでいただいたので「似ていることば」もご紹介していきます。『目でみることば』のヒットを受けて、次なる新機軸として作り出したのが、似ていることばやモノを比較した『似ていることば』。まず紹介したいのは<「糸こんにゃく」と「しらたき」>です。まずこちらが「白滝」。

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「糸こんにゃく」と「白滝」の違いはその作り方にありまして、こんにゃくの材料を湯の中に糸状に流し込み固めていくのが白滝。この湯の中に落ちる様が「滝」のように見えるから「白滝」というわけです。そしてこちらが「糸こんにゃく」。

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糸こんにゃくは、出来上がった普通のこんにゃくを写真のような「突く」機械で押し出して作ります。色が黒いのが糸こんにゃくと思っている人もいるかもですが、黒いこんにゃくを突けば黒い糸こんにゃくが、白いこんにゃくを突けば白い糸こんにゃくが出来るんですね。糸こんにゃくも白滝も材料は同じですから、当然、栄養価なども同じ。ただ、一般的に白滝のほうが細くて味が染みやすいため、鍋など用いられるケースは多いそうです。

こういった「似てるけどどう違う?」を写真で一目でわかるようにしたのが「似ていることば」。どこかで手にとってみてくださいませ。

似ていることば

似ていることば

 

 

お気に入りの「目でみることば」その5 不正乗車が「キセル」の理由

お気に入りの「目でみることば」を紹介するコーナー。今回は「雁首を揃える」のサブネタで紹介した《不正乗車が「キセル」の理由》です。

決められた運賃を支払わずに鉄道などに乗ることを「キセル」といいます。パスモなどICカードで乗車する時代となっては、もうほとんど使われなくなった言葉ですが、昭和の終わりころまでは、しばしば「キセル乗車」なんていわれていましたよね。キセルというのは、タバコを吸う道具なんですが、なぜこれが不正乗車を意味するのか、それはその形状に由来しているのです。これが「キセル」。

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このようにキセルというのは、前部の火皿から雁首までと後部の吸い口の部分だけが金属製で、その間は竹でできている。不正乗車の典型例に、乗る駅から次の駅までの切符と、降りる駅のひとつ前からの切符だけを買って、道中の大半の料金をごまかす手口があったことから、前と後ろだけが金属であるキセルの形状になぞらえた――というわけなんですね。

なんともうまく言ったものですが、おそらく隠語なんだろうなぁと。隠語には、このようにわかる人だけわかるものがあって、これはこれで実に「目でみると」面白いのです。『目でみることば 有頂天』に収録。

目でみることば 有頂天

目でみることば 有頂天

 

 

お気に入りの「目でみることば」その4「灯台下暗し」

お気に入りの「目でみることば」を紹介するコーナー。今日は「灯台下暗し」です。この「灯台」が、海にある灯台ではなく、部屋で使う燭台だと知ったときから、ぜひ撮りたいと思ったことば。肝心の燭台がなかなか見つかりませんでしたが、骨董市で見つけたこの洋風燭台を、山出カメラマンのスタジオに持ち込み、ライトをいろいろ調整して「下暗し!」という感じで陰が浮かび上がったときの感動といったらありませんでした。これが灯台下暗しです。

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おー!まさに下暗し! この本は絶対にに面白いよ!と確信した一枚。忘れられない「目でみることば」となりました。『目でみることば』収録。

目でみることば

目でみることば

 

 

お気に入りの「目でみることば」その3「互角」

お気に入りの「目でみることば」を紹介するコーナー。今日は「互角」です。

意味は「両者の力が拮抗していること」というのは、みなさんご存知でしょうが、語源となったものは、意外と知られていません。これなんですね。

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互角ということばは、双方に伸びた牛の角の長さが同じことに由来しているんですね。これ、簡単に撮れると思うでしょ。いやー。これが実に大変だったのです。というのは、一般的に牧場などで飼われている牛というのは、安全性を考慮して、その角が切られていることが多いんですよね。取材に行けそうな牧場に電話しても、角はないんですよ……の連続でなかなか見つからない。もう無理かなと思っていたとき、たまたま上野動物園に行った折に、こんな立派な角を持った「見島牛」くんに出会えたのでした。まさに互角な立派な角! 「目でみることば」に収録です。

目でみることば

目でみることば