おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

将棋ペン倶楽部 掲載御礼

第33回将棋ペンクラブ大賞において『将棋「初段になれるかな」大会議』が技術部門の優秀賞をいただきました。昨日、発送していただいた「将棋ペン倶楽部」の2021年・秋号に我々の受賞の挨拶が掲載されていますので、機会ありましたらご覧ください。

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さくらはな。さんが、受賞記念に描いてくれたイラスト。最高だな。宝物ができました。

「将棋ペン倶楽部」さんは、こういった将棋にまつわる執筆・出版の懸賞活動をされていて、本当にありがたいです。私たち文筆業は、こういったご褒美を力にまた本を作ることができます(いろんな業界にこういった活動、派生しないかなー。派生してくれると嬉しいなー)。ありがとうございました。御礼まで。

 

「しらべるちがいのずかん」を読んで「からいシシトウ」を当てよう

新刊「しらべるちがいのずかん」発売になりました。

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作ろうと思ったきっかけは「からいシシトウって当てられる?」という素朴な疑問でした。あのからいシシトウを見るだけで当てたらすごくない? そう思って、スーパーで買ってきたシシトウを並べて写真に撮って「このなかでどれがからい?」と、facebookにアップしたら、お友達の唐辛子やさんがズバリ当てて驚いたのです。そして我が家の妻もズバリ当てて、なお驚いたのです。なんでわかるの? そう思ってカメラマンの山出さんと、たくさんシシトウを買ってきて観察し続けた結果、からいシシトウを見分けるコツを掴むことができたのです。f:id:okataco:20210829181812p:plain

ここから得た哲学は「とにかくじっくり観察すると思わぬ発見がある」。そこでいろんなものを「かんさつする」「しらべる」楽しさを伝えようとしたのが、この本の第一の魅力でしょうか。生卵とゆで卵の見分け方にもトライしました。

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「光をあてる」「まわす」といったよく知られた方法だけでなく、見ただけで見分ける方法も発見しましたよ。あと沈む氷の作り方とか。

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あとかわいい動物たちの見分け方も紹介しています。こちらはチンアナゴとニシキアナゴ。

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あと旧作からの再編集も半分くらい織り交ぜて、幅広いジャンルで「しらべる」「みつける」「くらべる」を楽しんでもらえる一冊となりました。総ルビでお子さんも読めます。子どもに読んであげようと思ったお父さん&お母さんがびっくり! そこを狙って作ってますので、ぜひご家族で楽しんでください。デザイナーのサトウミユキさんも楽しんで作ってくれました。この本扉とかサイコー。

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こちら「はじめに」です。

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どうかお気に入りの書店さんでお買い求めください。きっと楽しいですよ。
お近くに書店さんがない方はこちらでどうぞ。

 ぜひ「からいシシトウ」を当てられるようになって、一目置かれてくださいね。

みなもと太郎先生 ありがとうございました

今朝、漫画家みなもと太郎先生の訃報をしりました。悲しくて悲しくて、その悲しさを埋めようと先生とのことを思い出しています。

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写真は、高知で行われた「漫画家大会議」で先生が講演される折、その対談相手にご指名いただきご一緒したときのものです。史跡だらけの高知を楽しそうに歩いておられた。たくさんの漫画家さんが集まるこの会議で座長に任命された先生は「なんでわしなの〜」とぼやきながら乾杯のご発声や挨拶をされておられたなぁ。帰りの飛行機で隣になって、漫画のこと歴史のことをいろいろ話してくださったあの一時間ちょっとは夢のような時間でした。

先生と初めてお会いしたは、1999年、僕がまだ社員編集者の頃で新宿にあるご自宅にインタビューで伺ったのでした。それから僕は会社をやめ、先生も潮出版の連載が終了し、発表の場所を模索される時代があった。その後、リイド社との縁ができて、風雲児たちのワイド版と、幕末編の連載が始まったときは嬉しかったな。

先生は、あの一度の縁をたいそう喜んでくださり、折あるごとに作品など送ってくださった。僕はありがたく拝読するなか、この「風雲児たち」という漫画が、これだけ素晴らしいクオリティなのに、あまり知名度がないことが大きな損失だと思って「ガイドブックを作りませんか」という話をしました。「風雲児たち」は名作だけど、ちょっと読んでみるかと思うには長すぎるので、ガイドブックがあればいいなと思ったのです。この話を先生は喜んでくださり、リイド社での企画も通ったので、平成27年ですから6年前ですか、紆余曲折あったものの「風雲児たちガイドブック解体新書」という本が出ました。

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この本のなかで、これから風雲児たちがどうなるかというインタビューをしました。

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このときのことをよく覚えています。「これから風雲児たちはどうなりますか?」と聞くと、身を乗り出して「話したいことは山ほどあるよ」と、本当に長く話してくださった。とりわけ坂本龍馬をどう描くかについて、力説されておられた。同書には先生のこんな話があります。

《どんな風に描くかは、これから考えていきます。ただ、おおまかな構想はある。きっちり描けば、近江屋まであと二十年はかかるでしょう。その間の竜馬の行動によって、竜馬派もアンチ竜馬派も認めさせるものにする。年々、竜馬は『風雲児たち』全体の主役に必要であるという思いは強くなっているので、誰もが納得できる坂本竜馬を描きますよ》

ちなみに最終回は、函館の五稜郭になるだろうとおっしゃっていました。

ああ、それらすべてを読みたかったです。先生の坂本竜馬をもっと読みたかったです。

本当に残念ですが、今まで素晴らしい作品をありがとうございました。

そういえば手塚治虫先生との出会いについてもどこかで描いておられたな。天国でお会いになっているでしょうか。

みなもと先生、今まで本当にお疲れ様でした。ゆっくりお休みください。本当に本当にありがとうございました。

おかべたかし

「植物観察家」の鈴木純さんとお話します 8/3 @B&B

もう2年も前になるんですね。書店で「そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい」という本を見かけたときのことはよく覚えています。

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内容も、その造作もすごくよくって読書メーターというサイトにこんな感想を書きました。
《いい本です。著者・鈴木純さんの「植物観察家」という肩書きもいいし、この肩書きのスタンスからくる「見て!楽しいよ」という構成もいい。オールカラーで植物からの吹き出しを多用したデザインも素敵。造本もいい。本の楽しさに満ちています。版元・雷鳥社さん。丁寧な仕事をされていますね。リスペクト》
ほんといい本なんですよ。雷鳥社という小さな出版社もまえから大好きで、ことあるごとに「いいよーっ」て言っていたからでしょうか。この本の著者の鈴木さんと対談しませんか?と声をかけてもらい、8月3日に下北沢のB&Bで《鈴木純×岡部敬史 「本を通して伝えたい、お野菜の世界」『種から種へ 命つながるお野菜の一生』(雷鳥社)刊行記念》というイベントで話してきます。
鈴木純さんは、町に咲く小さな花を観察してその魅力を伝えるワークショップなども開催されているので、興味ある方、調べてみてください。こちらにプロフィールとかあるかな。
 出身は東京農業大学。今、僕は経堂に住んでいるのですが、なにかと農大の方との縁が広がって不思議で嬉しいです。
*イベント詳細こちらです。オンラインのみですが、ぜひご参加くださいませ。
*鈴木さんの新刊『種から種へ 命つながるお野菜の一生』も面白いですよ。

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*小さな教訓
《好きなものは「いいぞー!」と声すると、素敵な出会いがあるものです》

『見つける東京』

7月5日に新刊『見つける東京』が出ます。

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東京書籍から刊行している、山出高士カメラマンとの共著のシリーズも14冊目。今回は「東京」がテーマです。

僕は、京都で生まれて18歳のとき大学進学を期に、この東京で暮らし始めました。一方、僕の子供たちは、東京で生まれて東京の学校に通っています。そうすると、社会の授業なんかで「玉川上水」など、東京の地理とか歴史を学んでくるんですよ。僕は、こういう東京の基本的なことを知らないな――。というのが、この本を作ろうと思ったひとつのきっかけでした。

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新旧の富士見スポットの紹介。「東京の人って富士山、なんでこんな好きなの?」というのも、東京に来たばかりの僕には新鮮な驚きでした。

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モヤイ像も、渋谷にしかないと思いきや、探すとたくさんある。

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右は防衛省にある大本営地下壕といわれる防空壕。これは昨年から公開されているものです。こういったところにも撮影に行ってきました。
「東京」の本って、驚くほどに膨大にあって、それぞれが深いんです。たとえば、この本で取り上げている「坂」とか「古墳」とか「川」とか「建築」なんかは、それだけでものすごくたくさんの本がある。でも、意外と《東京では坂とか古墳を見ると楽しいですよ》と、そのいろんな入口、いいかえると「東京の見方」を紹介している本は少ないので、そういった立ち位置の本にもなっていると思います。

それで作るうちに「昔の自分に読ませたい」と思うようになりました。
それこそ18歳の、東京に来たばかりの自分に読ませてあげれば、きっとこの東京を見る目も大きく変わっただろうし、より充実した東京生活が送れた気もします。そういう意味でこの本は「地方から来て東京で暮らしている人」に読んで欲しいなと思います。

www.tokyo-shoseki.co.jpこちら東京書籍の本書のリンクですが、よかったら地元の本屋さんで予約してください。そういった小さなことで、この東京だけでなく、いろんな町が魅力的になるんだと改めて感じております。では、よろしくお願いします。

美しい「真ん中に湯船のある西の銭湯」竹殿湯さん閉店の報

読者の方に教えていただいたのですが『くらべる東西』でご紹介した「西の銭湯」の「竹殿湯」さんが先日の5月末日で閉店されたそうです。

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こちらが竹殿湯さんの浴室。関東は湯船が奥にあるのに対して関西は中央にある―。というわけで、美しい中央にある湯船のお風呂屋さんを探して撮影に伺ったのですが、配管の関係で、関西でも中央に湯船を配しているところは年々減っているそうです。他にもいろいろ探したのですが、これほど美しいところはなかなかないんじゃないかなぁ。

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こちらが外観。優しいおじさんがされていたのですが、残念ですね。どうも建物の契約の関係のようで、惜しまれての閉店となったそうです。一緒に行った山出カメラマンがいくつか撮影してくれていたものがあるので写真、紹介しておきます。

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ここの湯上りに生ビールサーバーがあって「ここで飲むとうまいよ」とおじさんが勧めてくれたんだよなぁ。そんなこともあって撮影後も夏に帰省すると何度か伺った素敵な銭湯でした。やはり歴史ある素敵なところは「行きたい」と思ったときに行かなきゃダメですね。竹殿湯さん、お疲れ様でした。

 というわけで、竹殿湯はもうありませんが、銭湯の東西の違いなどいろいろこちらの本に載っておりますので。

 

文春ムック『読む将棋2021』

今日、文春ムック『読む将棋2021』が発売になりました。

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普段、棋士インタビューなどを寄稿している「文春将棋」さんが「ムックを作る」というので声をかけていただき編集にも参画。もともと僕は『別冊宝島』というムック畑出身なので、久しぶりのムック編集となりましたが、やはり多くの方のいろんな原稿が詰まった形式は面白いものだなぁと改めて。

僕が執筆した原稿は《豊川孝弘七段》《深浦康市九段》《高野秀行六段》《地方棋士座談会》と《藤井聡太、進化の過程》が収録されています。どれも思い出深い原稿と棋士の先生方。ご一読くださいませ。

別冊宝島』がまさにそうだったのですが、こういうムックはいろんな才能が集まり、世にでる契機となる媒体なんですよね。多くの人に愛される一冊になり、来年度以降も続くといいなと思っております。