おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

『目でみる方言』見本到着

ライフワーク『目でみることば』シリーズも第18弾となりました。今回のテーマは方言です。

カバーは、鉛筆が尖っている様ですが、京都出身の僕からすれば「ぴんぴん」にしか見えません。しかし、これにもいろいろ方言があって、三重県は「ちょんちょん」石川県は「けんけん」富山県は「つくつく」そして、愛知県では「ときんときん」。もっとたくさんあるはずなんですが、きっと愛知県の人と「ときんときんでしょ!」という熱量がいちばん高いはずなのでぜひいろんな地域の人が集ったときは「これなんていう?」と聞いてみてください。これが楽しい。

このように、この一冊を多くの出身地の人が集うところ、それこそ学生会館とか、温泉のロビ―なんかに置いてもらって、いろんな出身地の人が「ほんまに?」「そっちはそんな言い方?」とか言い合ってもらえたらなと思って作りました。

この本では、できるだけ今でも使うことばを写真と共に紹介しています。この「今でも使っている」というのは「方言だと思わなかった」につながることが多いのですが、その最たるものが宮城県や東北、北海道一帯で使われる「うるかす」でしょう。

使った食器などを水につけておくことを意味しますが、こうすることであとで洗いやすくなるわけですね。「お茶碗、うるかしておいて」と伝えるわけですが「うるかす?」と、関東より西の人は思うのではないでしょうか。実は僕も知らなかった。でも東北以北の人は、うるかすって方言?って驚くわけです。でもこのことばすごく便利なので、方言にしておくのはもったいないですよね。

あとこんなことばも。これは長野県。花にみずを「あげる」ことを「くれる」と言います。学校で花にみずをあげる係は「水くれ当番」です。

これは山口県。「届かない」という意味ですね。

こういった方言を写真で解説しつつ、いろんなことばにまつわるコラムを収録しています。

これはデザイナーのサトウミユキさんが表4に描いてくれたイラストですが、この食べ物のこととかも書いています。

きっと夏休みの自由研究のヒントもたくさん詰まっているので、学校などでもぜひご覧ください。

アマゾンありますが、よかったらお近くの本屋さんで予約してもらったら嬉しいです。

発売3月10日かな。また情報、いろいろアップしていきます。

#あしたの東京プロジェクト で行く伊豆大島の旅

「あしたの東京プロジェクト」という東京都が主催する「東京の新しい魅力を発見する」をテーマにしたコンテンツがあります。ここが主催する伊豆大島のツアーがあり妻が応募したところ当選したので、家族4人で行ってきました。

ツアーは2日間の予定ですが、出発が早朝のコースを選択したので、前日入り。島の南部にある波浮港に宿を取り南下、途中バームクーヘンの愛称のある断層を見学。夕日に照らされて美しい。

波浮港。今は静かな漁港ですが、往時は、漁船で大賑わいだったとか。「伊豆の踊子」の踊り子たちの出身地としても知られています。

宿はこちらの「近(コン」さん。一棟、家族使用できてとても快適でした。おすすめ。

近くの港寿司で、名物「べっこう寿司」をいただきました。

波浮港の近くにある「鉄砲台」と呼ばれるところは、見晴らしの良さもあって、戦時中は軍の施設が置かれたところだとか。

さて、「あしたの東京プロジェクト」は翌日、元町港に集合してスタート。まずは三原山の周囲に広がる裏砂漠を歩きます。火山でできたこの類のない景色を最後までいろんな角度で見ることができます。

三原山の山頂付近にめがけて歩く歩く。

そうすると火山岩由来のこういった黒い砂地に出る。

天候もよく絶景でした。同じ「東京」にこんな景色があるなんて想像もしなかったな。

さてプログラム第二弾は、島の特産品である「椿油」絞り体験。島の気候に合った椿の花が島のあちこちにあり、この種から油を絞り取ります。

堅い実を杵などで潰したのち、ふるいにかけていきます。その後、蒸して絞って完成。お土産に油をいただき、またパプリカの油炒めなんかもいただきました。娘がすごくこの体験を喜んでいました。

そして夜には、星空体験ツアー。大きなビニールシートを敷いてその上に寝転がり、周りに街灯がまったくない場所で星空を見る。こちらも得難い体験でした。

そして翌日は朝から島のあちこちを自転車で回るサイクリング。

ガイドさんが秀逸で、火山島ゆえの面白い地形を楽しく説明してくれます。写真は溶岩でできた桟橋。

水蒸気爆発によって赤く変色した岩。

波で侵食した独特の地形。火山の島ということで、危ないところに住んでいるというイメージもありますが、この火山を信仰することで、火山と共に生きてきた島という新たな認識ができました。火山とともに暮らす。その感覚は、この独特の地形や文化を知ると、すっと腑に落ちるんですよね。最後の噴火が1986年と34年前のこと。40周年ほどの周期で噴火を繰り返す三原山ですから、もういつ噴火してもおかしくないのだとか。ただ、死ぬまでにもう一度噴火を見ておきたいと思うお年寄りもいると聞きました。でもその感覚、この自然を眺めているとなんかわかるな。

牧場もあってソフトクリームなどいただきました。

学びの多いよい旅でした。

この旅の影の主役がこの高速ジェット船。家人が船酔いするからとこれまで島旅を敬遠してきましたが、水の上に浮かんで高速で進むこの船には、いわゆる波に漂うといった揺れが存在せず、船酔いがほとんどない。家族もみんな酔わなかったと言っていて、島に行くハードルがぐんと下がりました。2時間ほどで伊豆大島に着くのですから、またぜひこの船に乗って家族で島に行きたいなと思った次第。やっぱり旅ってこうやって何かを知ることが、面白さなんだなと感じたよき時間でした。「あしたの東京プロジェクト」に感謝。また応募して行ってみたいと思います。

*2年前に出した「見つける東京」では島に関するところはあまり触れられなかったんだよなー。まだまだ「見つける東京」の旅は続きそうです。

 

 

日本最高の史跡「関ケ原」ルポ

今日9月15日は関ヶ原の戦いがあった日なので『目でみる日本史』に掲載した「関ヶ原レポート」を再編集して紹介しておきます。言いたいことはひとつで、関ヶ原は最高の史跡!ということですよ。こんなワクワクするところは、なかなか他にありません。ぜひみんな笹尾山と松尾山に登りましょう。

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 関ケ原に着いた私たちがまず向かったのは、「岐阜関ケ原古戦場記念館」。

ここは、家康が最後に陣を置いたという「陣場野公園」に隣接し、関ヶ原の合戦場のほぼ中心地に位置する記念館です。中には関ヶ原の戦いの概要がわかる展示がされているだけでなく、最上階は展望室になっていて関ヶ原が一望できますし、カフェスペースでは、関ケ原の戦いをモチーフにした食事も提供されています。私は「戦略武将カレー」を注文。時間もないので一気呵成に食べ終えて、さっそく石田三成が布陣した「笹尾山」に行くことにしました。車に乗れば数分で麓の駐車場に着き、登ること5分で展望所に着きます。こちらが麓。おー!なんか雰囲気あっていいぞ。

そして登ること5分で展望所に着きます。ここからの景色がサイコー!

そして「関ケ原」のイメージがガラッと変わります。「関ケ原」という場所は、その「原」ということばから、平原をイメージするのではないでしょうか。栃木県日光市の「戦場ヶ原」など、それは広大な湿原平野でしたが、実際の「関ケ原」は山々に囲まれており、なかでも主戦場になった一帯は、山間の盆地のようなところです。また、先ほどまでいた「岐阜関ケ原古戦場記念館」が、すぐそこに見えることにも驚きます。この三成と家康の距離感を体感できることが、ここに来る最大の価値ではないでしょうかね。

時代を感じさせる史跡表示柱もかっこよかったです。そうそうここで嵐の松本潤さんをお見かけしたのもよき思い出。大河の勉強で来られていたんだなー。

さて次に向かったのが、小早川秀秋が布陣したという松尾山です。笹尾山から車で10分ほどで登山口に到着。その駐車場に「松尾山へようこそ 杖をついて登ってください 楽ですよ」と杖が置かれていたので、有り難くお借りして登山開始。ここはすぐに登れた笹尾山とちがって、山頂までおよそ40分かかります。本当にこんな距離を歩いて1万5千といわれる軍勢が登ったのか。その人たちのトイレはどうしたのか。そんな素朴な疑問を山出カメラマンと話しながら登るとようやく頂上が見えてきた。

こちらからの眺めもいいんですよ。

石田三成が登った笹尾山にくらべてずいぶんと歩きましたので、当然のように家康軍がいた場所もずいぶん遠くに見えます。こんな遠くから秀秋くんは「本当に裏切るべきか」と思い悩んでいたのかのか……。これもここまで来たからこそ抱ける感慨です。同じ戦場とはいえ石田三成小早川秀秋はこんなにちがう景色を見ていたということも、ここに来たからこそ感じられることです。おそらく関ケ原に来た人でも、この松尾山の山頂まで来る人は、ごく一部だと思いますが、ここに登らずして関ケ原を去るのは実にもったいない。ぜひ登ってくださいね。

というわけで今でも思い出すと、あの日の興奮が蘇る関ヶ原。他のロケを同日にやっていたので、あまり長く滞在できなかったのですが、今度はレンタサイクルで、方々を丁寧に回ってみたいものです。将棋ファンのみなさんには10月9日に将棋サミットなるイベントがあるみたいなので、行かれてみてはいかがでしょうか。

www.shogi-summit2022.jp

また関ヶ原の旅の気分を盛り上げるためには、こちらの「目でみる日本史」もどうぞ。

 

「くらべる東西 くらべる日本 じゃあ三重は?」でわかった三重県の東か西か

昨日9月4日、津市の三重県総合文化センタートークセミナー「くらべる東西 くらべる日本 じゃあ三重は?」をやってきました。200人ほどの方が来てくださり、いろんなジャンルの東と西の写真を紹介して「三重はどっち?」と、会場の人に東なら赤い紙、西なら青い紙を出してもらって、三重県の東西立ち位置を決めるという趣向。

これ、すごく盛り上がって楽しかったんですよ。それで当初、15の項目のうち「13くらい西じゃないの」と三重出身の山出さんも言ってたんですが、これが思いのほか接戦だったのです。こんなの調べたことある人あまりいない貴重なアンケートだと思うので、以下、15項目の「三重県の人に聞いた東か西かを」発表したいと思います。

《1 いなり寿司》

東は俵型、西は三角というちがいですが、こちらは東の方が多かった。東1ー西0。

《2 銭湯》

東は湯船が奥に、西は湯船が中央にというちがい。こちらは東が多い。東2ー西0。

《3 おでん》

つゆの色ですね。濃いか薄いか。こちらは西が多い。東2ー西1。

《4 ちらし寿司》

生の魚を使うか、そうでないか。こちらは西が多い。東2ー西2。

《5 ねぎ》

関東は白いネギですが、関西は青いネギ。こちらは西が少し多い。東2ー西3。

《6 タクシー》

東京はカラフルですが、大阪はじめ関西は黒いところが多い。これはタクシーをハイヤー利用するためですね。こちらは西が多い。東2ー西4。

《7 桜餅》

東京は長命寺の門前で売られたクレープ状の桜餅。関西は道明寺粉を用いたものですね。こちらは西が多い。東2ー西5。

《8 ひなあられ》

関東は甘いポン菓子なのに対して、西は醤油味の「おかき」。こちらは西が多かった。東2ー西6。

《9 スコップ》

スコップという名称が「小さなもの」を指すのか「大きなもの」を指すのか。関西は断然スコップは子供が砂場に持っていくやつですが、これがなんとほぼ同数。わりと関東と関西できっぱり分かれるものの三重は不明となっていたのですが、それが実証される形になって驚きました。引き分けです。東2ー西6。1引き分け

《10 落語家》

西の落語家は、見台、膝隠しを使う。どちらが馴染みがあるかといえば東とのこと。東3ー西6。1引き分け

《11 定食》

東京の定食は味噌汁が右下ですが、大阪では食べやすいようにと右上に置く。こちらは東が多かった。東4ー西6。1引き分け

《12 みたらし団子》

関東は1串に4つ。関西は1串の5つ。これは西が多い。東4ー西7。1引き分け

《13 肉》

肉といえば、関東は豚肉ですが、関西は牛肉。こちらは牛肉支持が多くて西に軍配。

東4ー西8。1引き分け

《14 たぬき》

蕎麦屋で「たぬき」といえば、関東は「天かす」ですが、関西では「きつね蕎麦」が出たり「あんかけうどん」だったり多種多様。天かすかそれ以外で聞いたら天かすが多い。

東5ー西8。1引き分け

《15 肉まん》

関東では、何もつけないけど、関西では辛子をつける。こちらは東が多い。東6ー西8。1引き分け

というわけで、結果《東6ー西8。1引き分け》となりました。

当初、西の圧勝かと思われたのですが、東の影響もしっかりあって、やはり三重は東西文化の中間点にあるのかなと思われました。なかなか興味結果でした。参加くださった本当にありがとうございました。三重県生涯学習センターのみなさんもありがとうございました。

今回の参考図書、以下です。

8月1日「あの棋士はどれだけすごいの?会議」のイベントやります。

おかげさまでたくさんの人に読んでいただいている『あの棋士はどれくらいすごいの?会議』ですが、8月1日にジュンク堂書店池袋本店で、トークイベントをやります。

8/1 高野秀行先生×岡部敬史さん×さくらはな。さんonline.maruzenjunkudo.co.jp

オンライン視聴もできますので、みなさん一緒に高野先生の「あの棋士トークを楽しみましょう。

 

あと、9月4日には、三重県の津市で「くらべる東西」「くらべる日本」のトークをやります。こちらはカメラマンの山出さんと一緒に。無料ですので、お近くの方はぜひ。

okataco.hatenablog.com

最近、息子が紅茶好きで、二人でいろんな店に行ってるんですが、家でも美味しく飲みたいねといろいろ探したところ、この21分方式というのが、とてもよかった。ちょっと手間かかりますが、おいしいです。おすすめ。

dot.asahi.com

いろいろ工夫して、過酷な夏を乗り越えましょう。日本の夏はもうそんな季節になった気がします。

 

シリーズ15弾『目でみる日本史』はみんなにも真似て行ってもらいたい旅ガイドです

『目でみることば』シリーズの15弾となる『目でみる日本史』が発売となります。カバーは石田三成が見た関ヶ原

つまり「あの歴史上の人物が見た景色を見に行く」という企画なのですが、これが実に楽しい。ほんと楽しいからみんな行って!というわけで、そのいくつかをご紹介します。

こちらは吉田松陰が見た下田湾。吉田松陰は、黒船に密航して海外に行こうとするのですが、それを試みたのがこの下田湾。入江になっていて、なるほど黒船はこんなところに停泊したのかと感じられます。松陰は夜中に小舟を盗んでここから黒船に向かったのですが、その景色がそのままある。十年ほど前、観光で行ったとき「これ松陰が見た景色と同じ」と思ったのが、この企画の出発点でした。

こちらはこの春に奈良に撮影に行ったときのもの。中大兄皇子が見た大和三山です。あの中大兄皇子が見た景色が、わりとそのまんま残っている奈良の素晴らしさたるや。

こちらは北条泰時が作ったとされる鎌倉切通のひとつ朝比奈切通。鎌倉は山に囲まれた天然の要塞で、攻められにくい分、行きにくい。そこでこういった山を切り開く「切通(きりどおし)」と呼ばれるものが作られたのですが、これが当時の雰囲気がそのまま残っている。

これは福沢諭吉大村益次郎が在籍して大阪の「適塾」の眺め。この先に見える窓の向こうが、この塾を作った緒方洪庵の書斎であり、夜、あの窓の明かりが点いていると、福沢や弟子たちは「先生がまだ勉強しているのだから俺たちも」と意気込んだそうです。

仕上がった本を見ると、歴史が古いものから並べたという工夫が活きていて、めくるたびに現代に近づく感じも楽しいです。弥生人から三島由紀夫までの旅、ぜひお楽しみください。