おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

『もし京都が東京だったらマップ』(2017読書2)

今年の2冊目はこちら。

もし京都が東京だったらマップ (イースト新書Q)

もし京都が東京だったらマップ (イースト新書Q)

 

 年末、京都に帰省した折、大好きな四条河原町の「FUTABA+京都マルイ店」で買ったもの。タイトル通り「もし京都が東京だとしたら」という仮定のもと、「赤羽は四条大宮」「岡崎は上野」などと特徴が共通する町を紹介することを核とした本です。

 本を見たとき、ネットの集合知によって作られた「ネタ本」かなという軽い気持ちで手にとったのですが、いい意味で裏切られた佳作でした。最近、読んだ京都本のなかで一番のオススメです。

 まず、この著者である岸本さんの立ち位置がいい。彼女は、京都出身で、幼少の頃から建築の仕事がしたいと夢見て、不動産業界に就職。当初、東京で働いていたのですが、京都に戻ってきて、京都に移住したいと考える人への不動産提案や、京都にある不動産の有効活用をガイドする、フリーの不動産屋さんなのです。そんな岸本さんが東京から来た人に「京都の北山というのは、東京の青山のようなところですよ」と説明するために「もし京都が東京だったらマップ」を作り始めたのです。

 こういった動機で作られた地図は、よくできています。僕は、京都で18年過ごした後、東京で25年以上過ごしてますが、なかなかうまいと思う。

「烏丸=丸の内」というのは、誰でも思い浮かぶでしょうが、「北王路=二子玉川」「御所南=目白」とか、たしかになぁと。「北野天満宮周辺=松陰神社前」って、鋭いのですが、このセンス、どれだけの人に伝わるでしょうか。僕は、この二つの町に近いところに住んでいる(いた)ので、よくわかりますがこれも上手(松陰神社前ってここ数年で、面白い個人店が増えた楽しい町になったのです)。「叡山電鉄沿線=JR中央線沿線」などは「えー! そう? まぁそうか。そうだなぁ」という4段落ちのような納得感。沿線の広さ、長さなど比べるべくもないですが、一乗寺あたりの空気感って、たしかに西荻窪あたりに似てますよねぇ。「池袋と鴨川だけは、どことも似てなかった」というのも、すごく納得。池袋は、他にない磁場があるのです。

 このように「そう?」とか「そうそう!」で、楽しみながらも京都の街の特徴がなんとなく理解できるのもこの「マップ」の良いところ。

 そのほかにも、京都は手づくり市が豊富にあって実店舗を持たずとも、商売のトライができるフリーランスに優しい街など、たしかにと思う指摘が豊富。京都の寺社、仏閣などの観光ガイドからは得られない「住む」を意識した京都ガイド。これから京都に住もうと考えている人にはもちろん、ぶらぶら京都を歩きたい人にもオススメですよ。