おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

みなもと太郎先生 ありがとうございました

今朝、漫画家みなもと太郎先生の訃報をしりました。悲しくて悲しくて、その悲しさを埋めようと先生とのことを思い出しています。

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写真は、高知で行われた「漫画家大会議」で先生が講演される折、その対談相手にご指名いただきご一緒したときのものです。史跡だらけの高知を楽しそうに歩いておられた。たくさんの漫画家さんが集まるこの会議で座長に任命された先生は「なんでわしなの〜」とぼやきながら乾杯のご発声や挨拶をされておられたなぁ。帰りの飛行機で隣になって、漫画のこと歴史のことをいろいろ話してくださったあの一時間ちょっとは夢のような時間でした。

先生と初めてお会いしたは、1999年、僕がまだ社員編集者の頃で新宿にあるご自宅にインタビューで伺ったのでした。それから僕は会社をやめ、先生も潮出版の連載が終了し、発表の場所を模索される時代があった。その後、リイド社との縁ができて、風雲児たちのワイド版と、幕末編の連載が始まったときは嬉しかったな。

先生は、あの一度の縁をたいそう喜んでくださり、折あるごとに作品など送ってくださった。僕はありがたく拝読するなか、この「風雲児たち」という漫画が、これだけ素晴らしいクオリティなのに、あまり知名度がないことが大きな損失だと思って「ガイドブックを作りませんか」という話をしました。「風雲児たち」は名作だけど、ちょっと読んでみるかと思うには長すぎるので、ガイドブックがあればいいなと思ったのです。この話を先生は喜んでくださり、リイド社での企画も通ったので、平成27年ですから6年前ですか、紆余曲折あったものの「風雲児たちガイドブック解体新書」という本が出ました。

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この本のなかで、これから風雲児たちがどうなるかというインタビューをしました。

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このときのことをよく覚えています。「これから風雲児たちはどうなりますか?」と聞くと、身を乗り出して「話したいことは山ほどあるよ」と、本当に長く話してくださった。とりわけ坂本龍馬をどう描くかについて、力説されておられた。同書には先生のこんな話があります。

《どんな風に描くかは、これから考えていきます。ただ、おおまかな構想はある。きっちり描けば、近江屋まであと二十年はかかるでしょう。その間の竜馬の行動によって、竜馬派もアンチ竜馬派も認めさせるものにする。年々、竜馬は『風雲児たち』全体の主役に必要であるという思いは強くなっているので、誰もが納得できる坂本竜馬を描きますよ》

ちなみに最終回は、函館の五稜郭になるだろうとおっしゃっていました。

ああ、それらすべてを読みたかったです。先生の坂本竜馬をもっと読みたかったです。

本当に残念ですが、今まで素晴らしい作品をありがとうございました。

そういえば手塚治虫先生との出会いについてもどこかで描いておられたな。天国でお会いになっているでしょうか。

みなもと先生、今まで本当にお疲れ様でした。ゆっくりお休みください。本当に本当にありがとうございました。

おかべたかし