おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

お気に入りの「目でみることば」その7 「図星」ってどんな星?

お気に入りの「目でみることば」紹介コーナー。今日は「図星」です。「人の指摘がその通りであること」を図星といいますが、では「図星」とは何か? これが図星なんですね。

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この弓の的の中心部が図星なんです。こりゃわかりやすい!と撮影場所を探したのですがこれが思ったより難しく、方々の弓道場などに電話した結果、東京武道館弓道場で撮影できたんですね。このためだけに団体登録とかして(笑)。撮ってしまえばシンプルな構図ですが、意外性が受けたのか、いろんな書店さんでこのPOPを作ってもらった思い出も。なんかじーっと見てると、ちょっと顔がほがらかになってくる不思議な写真です。「目でみることば」収録。

目でみることば

目でみることば

 

 

「現代の古典」として「遊泳舎」さんが『目でみることば』を取り上げてくれました

先日「梅田蔦屋書店のフリーペーパーで知って『目でみることば』を読みました」と、読者の方からメールをいただきました。

はて。それはどういうものか、東京書籍の営業の方にお聞きしたら、問い合わせの上、現物を送ってくださったのでご紹介します。

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「読書の学校」とは、大阪の梅田蔦屋で定期的に行っているイベントなのだとか。協賛・協力にいくつかの出版社が名を連ねておられますが、そのなかの「遊泳舎」さんが『目でみることば』を取り上げてくださいました。

「現代の古典」というテーマに「生まれ変わる」という切り口での選書3冊です。

「すでに世の中に存在しているもの、日常に定着しているものをもう一度見つめ直し、新たな形で生まれ変わらせることで、時代をまたいで生き残ってきた本があります。形式を変えながら、魂を受け継いでいく力強い三冊を選びました」

とのコメント。この「すでに世の中にあるものを見つめ直す」というのは、近年、自然と意識している僕の中での企画のありようです。新しい企画として、その題材ではなく、切り口をいかに楽しく面白くするか。題材は普遍的なものであっていいんだろう。そう考えています。またひとつ嬉しいご褒美をいただきました。感謝。

yueisha.net

遊泳舎は、できたばかりの小さな出版社です。ホームページなど拝見すると、その意気など共感するところが多く、刊行物などと出会うのが楽しみになりました。

お気に入りの「目でみることば」その6 「引っ張りだこ」

今日は『目でみることば』の表紙を飾った「引っ張りだこ」のご紹介。人気ものであることを「引っ張りだこ」といいますが、これがタコの干物に由来すると知りました。さて撮りに行こうと思ったところ、この干物を作っているところが案外少なく、東京から至近の場所が、愛知県の日間賀島という島だという。うーん。書籍って予算が厳しいのですが、引っ張りだこが撮れるならば行くしかないと、山出カメラマンと島に向かったのでした。

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おー!島ではこんなタコさんが歓迎してくれます。

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小さな島ですが、路地はこんな感じ。散歩していると……。

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あったあった「引っ張りだこ」! ただ撮影したものの「背景が空のほうがよくない?」と山出カメラマン。たしかにこれなら、この干物を送ってもらって撮影したのと、たいして変わらないし……。そこで島内を探検することに。幸いレンタサイクルがあったので、これを借りて島内探検にGO!

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島の中にはこんなタコ交番が^^

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蛸壺もあったよー。

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そしてついにご対面! カバー写真にもなった青空の下で干されている「引っ張りだこ」くんに出会えたのでした。

「目でみることば」シリーズは、すべて写真を撮るということをコンセプトにしています。大きく謳うわけでもないですが、ちゃんと見てくれた人には伝わると思っています。ただ単にことばを説明するだけでなく「そこにわざわざいく」という楽しさを伝えられたらなと。そんなところも楽しんでもらえたら嬉しいです。

目でみることば

目でみることば

 

 おかげさまで、久米宏さんのラジオに出演以降、本書のご注文をたくさんいただいております。ラジオで「近くの本屋さんから注文してください」と言ったの、少しは効果あったかな。よかったよかった。そういえば、京都の大垣書店烏丸三条店で「目でみることば」シリーズのフェアが始まったそうです。お近くの方、ぜひよろしくお願いいたします。

お気に入りの「似ていることば」その3 「陰」と「影」

お気に入りの「似ていることば」のご紹介。今日は「陰」と「影」です。まず写真を見ましょうか。こちらが陰。

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そしてこちらが影。

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光によって物の後方にできる暗い部分のことが「陰」。地球儀のアジアの部分に光りを当てると、反対側のアメリカ大陸などが暗くなりますが、これが「陰」というわけですね。

一方、光によって映し出される物の形が「影」です。地球儀に光を当てたときに、地面に映る地球儀の形が「影」ですね。

この「陰と影」は、最初から「地球儀」モチーフが頭に浮かび、想像どおりの見事な出来栄え。山出カメラマンのライティングも完璧でした。

こういして学べは違いがよくわかりますよね。 

似ていることば

似ていることば

 

 

お気に入りの「似ていることば」その2 「対称」と「対照」

お気に入りの「似ていることば」のご紹介。今日は「対称」と「対照」です。「対称」とは「釣り合っている」こと。左右対称などといいますよね。一方「対照」は、違いが際立っていること。これを写真で表現するには、どうすればいいか――とても頭を悩ませました。なんの脈絡もない「対称」と「対照」の写真を載せても面白くない。どこかに関連性がないと、つまらないので、考えに考えぬいてひらめいたのです。それがこの「対称」。

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そして「対照」。

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舞台は東京都港区にある増上寺。その本殿は左右対称。そして後ろにある真っ赤な東京タワーとの構図はまさに「対照」的。もともとルーブル美術館にガラスのピラミッドがあり、ピラミッドは左右対称、そしてルーブルとの対比が対照と思いつき、そんな構図が日本にないかと探して巡り合ったのです。

何を撮影すればいいのか、考えに考えぬいた末の「似ていることば」。忘れられない2枚の写真となりました。 

似ていることば

似ていることば

 

 

お気に入りの「似ていることば」その1 「糸こんにゃく」と「白滝」

<お気に入りの「目でみることば」>をたくさんの方に読んでいただいたので「似ていることば」もご紹介していきます。『目でみることば』のヒットを受けて、次なる新機軸として作り出したのが、似ていることばやモノを比較した『似ていることば』。まず紹介したいのは<「糸こんにゃく」と「しらたき」>です。まずこちらが「白滝」。

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「糸こんにゃく」と「白滝」の違いはその作り方にありまして、こんにゃくの材料を湯の中に糸状に流し込み固めていくのが白滝。この湯の中に落ちる様が「滝」のように見えるから「白滝」というわけです。そしてこちらが「糸こんにゃく」。

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糸こんにゃくは、出来上がった普通のこんにゃくを写真のような「突く」機械で押し出して作ります。色が黒いのが糸こんにゃくと思っている人もいるかもですが、黒いこんにゃくを突けば黒い糸こんにゃくが、白いこんにゃくを突けば白い糸こんにゃくが出来るんですね。糸こんにゃくも白滝も材料は同じですから、当然、栄養価なども同じ。ただ、一般的に白滝のほうが細くて味が染みやすいため、鍋など用いられるケースは多いそうです。

こういった「似てるけどどう違う?」を写真で一目でわかるようにしたのが「似ていることば」。どこかで手にとってみてくださいませ。

似ていることば

似ていることば

 

 

お気に入りの「目でみることば」その5 不正乗車が「キセル」の理由

お気に入りの「目でみることば」を紹介するコーナー。今回は「雁首を揃える」のサブネタで紹介した《不正乗車が「キセル」の理由》です。

決められた運賃を支払わずに鉄道などに乗ることを「キセル」といいます。パスモなどICカードで乗車する時代となっては、もうほとんど使われなくなった言葉ですが、昭和の終わりころまでは、しばしば「キセル乗車」なんていわれていましたよね。キセルというのは、タバコを吸う道具なんですが、なぜこれが不正乗車を意味するのか、それはその形状に由来しているのです。これが「キセル」。

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このようにキセルというのは、前部の火皿から雁首までと後部の吸い口の部分だけが金属製で、その間は竹でできている。不正乗車の典型例に、乗る駅から次の駅までの切符と、降りる駅のひとつ前からの切符だけを買って、道中の大半の料金をごまかす手口があったことから、前と後ろだけが金属であるキセルの形状になぞらえた――というわけなんですね。

なんともうまく言ったものですが、おそらく隠語なんだろうなぁと。隠語には、このようにわかる人だけわかるものがあって、これはこれで実に「目でみると」面白いのです。『目でみることば 有頂天』に収録。

目でみることば 有頂天

目でみることば 有頂天