おかべたかしの編集記

執筆・編集の記録とお知らせと。

「建国記念の日」と「基礎教養 日本史の英雄」

今月末に『基礎教養 日本史の英雄』という新刊が出ます。

基礎教養 日本史の英雄

基礎教養 日本史の英雄

 

 《日本の歴史をよく知らない。日本を誇らしく思えない。そもそも歴史が好きじゃない。こんな人が「日本史を理解し、日本を誇りに思い、歴史を好きになる」キーワードが「英雄」です。本書では英雄を「その人がいなければ、今の日本がなかった人」と定義しています。 その数、20人》

このように20人の英雄で知る日本の歩みーといった本なのですが、その骨子のひとつは「僕たちは、教えられるべきことを、教わってこなかった」というものです。
戦前は、学校で日本史の英雄を教えていた。でも、その機会がとても減ってしまったので、英雄について学ぼう―というわけです。

この「戦後は、教わってこなかった」と書くと、眉毛に唾しちゃう人もいると思います。昔は僕もそうでした。「いや、そんなことないでしょ」と思っていました。でも、そんなことあるのです。「どう考えても教えるべきなのに、教えてこなかったこと」があるのです。

その一例が、明日の「建国記念の日」についてです。
明日2月11日は、祝日である。休みである。これは誰でも知っている。「何の祝日?」と問われれば「建国記念の日」と答える人も多くいるでしょう。

でも「建国記念の日とは、何をもって定められたのか?」と問われると、多くの人が答えられない。これを学校で教わったという人は、ほとんどいないと思います。

堀井憲一郎さんの『ねじれの国、日本』という本に、若者に「建国記念の日」は何を指しているのか聞き取り調査したという話が載っていて、そこにはいろんな答えがあります。「鎖国解除の日?」「明治政府が近代国家宣言をした日?」「日本が民主主義になった日?」「天孫降臨の日?」などなどなど。

ねじれの国、日本 (新潮新書)

ねじれの国、日本 (新潮新書)

 

 習っていないから、答えがバラバラ。どう考えても自分の国にとって、少なからず大事そうな日なのに、なぜ休みなのかを教えない。堀井さんはこう書いています。
《アメリカの独立記念日、フランスの革命記念日を聞くと、知っている。それは授業で教えるからだ。日本の紀元は教えず、アメリカフランスの紀元は教える。それが日本の基本的な態度である》

このように「教えるべきであろうに、教えてこなかったこと」があるのです。
ちなみに答えは「神武天皇が初代の天皇に即位した日」。この「初代天皇神武天皇」ということも、ほとんどの人が習ってこなかったはずです。推古天皇は33代、桓武天皇は50代、後醍醐天皇は96代、こう言及するのに、初代の名前には触れないでいる。

大雑把にいえば、戦前は天皇に対する教育が行き過ぎたから、戦後はあまり触れないようにしている。なんとなく、戦前はみんな悪く、戦後はみんな良い。そんな雰囲気の歴史教育が行なわれてきたー。

というわけで「教わってこなかった、知るべきこと」を英雄の物語を通して知っていこうというのが『基礎教養 日本史の英雄』のひとつのコンセプトです。全部で20人、時代順に出てきますが、最初に登場するのは、誰であろう初代天皇神武天皇

またこの本については、追々書いていきます。

f:id:okataco:20160208154020j:plain

*装丁は『目でみることば』シリーズも担当してくださっている佐藤美幸さん。カバーを外した中の表紙なども面白くなっていますので御覧ください。